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Vol.014 ベスタクス株式会社 社主 椎野秀聰第3話 起業するは我にあり
コラム(3) パーソナル・データ(3)
音楽を愛する人のために
 私は常日頃から社員に「売れる物」ではなく「良い物」を作れと言っています。売れるかどうかだけを考えていると、自分が好きでやっているはずのことが次第に苦しくなってくるからです。しかし本当に音楽が好きな人のためのものを考えて作っていれば、なにより楽しいし、いつかかならずミュージシャンや社会から認めてもらえるようになってきます。
  ベスタクスは良い物を作る会社、オリジナルな物を作る会社だという姿勢が評価されているためだと思いますが、ホームページには海外からも合わせて月間2,000万件近いアクセスがあります。私がホームページにほんの少し新しい商品について書き込みしただけで海外でまたたく間に話題になり、2ちゃんねるでも「どこで買えるんだろう」といった話が飛び交うようになります。まだ発売されてもいないのに、若者たちが自然と広めていってくれるのです。
  世界中の若者がVESTAXという会社を支持してくれるのは、音楽を愛する人のために仕事をしている会社だということ理解していてくれるからだと思います。また、私自身が体制には軽々しく組みしないという姿勢を直観的に感じ取ってくれているからだと思っています。

心意気から生まれる会社

 私は「きぎょうか」には二種類あると思っています。一つが興すほうの「起業家」。もう一つは企てる「企業家」です。私自身は興す方の起業家だと思っています。起業はしますが、企業はしません。起業というものは本来、夢や楽しみなどが最初にあってから興るものでしょう。今の日本の会社には、最初から”企てる”会社が多すぎる気がしています。「本物を作りたい」といった、そんな心意気から生まれる会社がもっともっとあって良いはずです。
  もちろん企業がすべて駄目と言っているわけではありません。私が尊敬する企業に大塚製靴があります。会長を務めていた大塚斌さん(現大塚製靴相談役)は昔から「履きやすい靴を作らなければ駄目だ」と言い続けていました。それこそ靴づくりの原点ですよ。確かに大塚のボンステップはとても履きやすい靴です。それが売れて収益が上がるとさらに「もっと履きやすい靴を作らなければ」となるわけです。
  靴づくりというのは目立つ業種ではありませんが、大塚さんは靴づくりにプライドを持っている。社長、会長を勤めた人が常に「靴は履きやすくなければならない」と言い続けているのですから、おそらくその理念は社員にもしっかりと受け継がれていると思います。尊敬できる企業家、良い意味での「”企て”を成功させた企業家」というのは、こういう方のことをいうのでしょう。

(4月25日更新 第4話「美徳の経営 」へつづく) 




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