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Vol.015 早稲田大学ビジネススクール教授 商学博士 松田修一第4話 流れる星のごとく
コラム(4) パーソナル・データ(4)
未知の世界に挑戦する
 私はゼミをあげて大学主催の100キロハイクに参加しています。私は出場しない者は卒業生としては認めないと公言しています。100キロハイクは歩いてみるとわかるのですが、フルマラソンよりはるかに厳しいものです。完歩するためにはなにより強い志が必要です。たとえば事前に「40キロ歩いてまだ余裕があれば先に行こう」などと甘い考えでは絶対に完歩できません。60キロを超えると根性のレベルに入ります。誰もがボロボロですが、そこでどこまで耐え抜けるかが問われるのです。また一人だけで100キロ歩ける人もいません。一人で歩いては必ず挫折します。そのために私は学生たちに一緒に歩く仲間を作らせています。
  この経験はビジネスにも生きると思っています。100の目標を立てるべきなのに達成しないと都合が悪いと考え目標を50まで下げて達成する人がいます。しかし100の目標を作って80の人と、50の目標を達成した人を比べてみてください。ビジネスの競争では80が勝ちなのです。志を高く持ち未知の世界に挑戦する。そこで「最後までやるぞ」と決意する人間と、「ここまででいいや」と考える人間は、最後では大きな違いが出てきます。
  もちろん私の考えが絶対ではないようです。同僚でマーケティングを教えている先生はまったく別の考えです。マーケティングはパイロットテストを事前に行い、商品販売のイエスかノーかを決めますから、それを100キロハイクにも応用しているのでしょう。彼は100キロハイクを15キロだけ歩いて終わりにします。少しだけ試して全体を見通せるのが頭の良い学者だと考えているからでしょう。


さまざまな分岐点

 私の人生にはさまざまな分岐点がありました。今から考えるとどこかで違う道を選んでいたら現在の私はなかっただろうと思います。たとえばサンワ事務所で同僚の会計士がJAFCOの担当になりましたが、これを手伝ったことで数多くのベンチャー企業との関係が生まれたというのもそうでしょう。大学に誘われたときの決断もその一つです。
  私の経験からいえば、人は分岐点に立ったとき、好き嫌いや欲得だけで判断するのではなく、積極的に「これをやりたい」と考えたり、「社会貢献したい」と考えて道を選ぶと、結果は良い方向に行くのではないでしょうか。そのすべての人が社会から受け入れられるとは限りません。「好きなこと」「できること」「受け入れられること」は、それぞれ違っています。自分が好きなことをやって、それが評価されて、社会から受け入れられる。この三つが上手くいった人が一番ハッピーだと思います。その点、私はとてもハッピーだといえます。
  今から考えると、私の人生はとてもおもしろいものでした。おもしろいというのは、それだけ途中で苦労をしたということでもあります。私の人生を振り返るとしたら、まさに「流れる星のごとく」という言葉がぴったりの人生だったと言われたい。夜空にキラリと光って消えていきたいのです。


次号(2007年6月6日発行)は、GCA株式会社 代表取締役の佐山展生さんが登場いたします。




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