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Vol.017 独立行政法人中小企業基盤整備機構 理事 後藤芳一第1話 反骨から気骨へ
コラム(1) パーソナル・データ(1)
自分のための時間を作る
 大学院修了後は、通商産業省に入省しました。仕事が忙しく、帰ったら風呂に入って寝るだけの生活が続きました。こうした生活を続けていると「自分の人生が仕事だけになってしまう」となんだか悔しいような気がして、1日に30分でも自分のための時間を作ろうと考えました。毎日30分、それを半年も続ければ結構な時間になります。その時間を使い、囲碁を勉強しようと考えました。
  段位の認定大会が近づくと、昼休みに囲碁の本を取り出して勉強しました。上司から「食事に行こう」と誘われた時にも、食事のあとの喫茶店では本を出して読んでいました。多少へんな光景だったかも知れませんが、そのような事をしていても許される雰囲気が通産省にはありました。こうして1回目は、失敗しましたけど、入省して2年目の9月に、初段になりました。同じ月に、将棋と麻雀も初段になりました。
  資格の修得はほかにもいくつかあります。最初は、宅地建物取引主任(宅建)の資格でした。これは省内で働いていたアルバイトの女性が持っていると聞きましたので、「じゃあ、私も」と軽く考えて参考書を読んで試験に臨みました。結果は惜敗でした。あとでそのアルバイトさんに、決定版の参考書があったと聞きました。次の年は、その参考書で勉強しましたが、土地バブルのときで受験者が増えて難化してしまい、また惜敗でした。

人間関係も財産になるだ
  さすがに3年目は本格的にと考えまして、東進カレッジに通い民法から学びました。講師は司法試験に挑戦している方で、この方から「法律の問題は複雑になればなるほど、基本や原理原則が大切」と教わりました。宅建に通るのに3年もかかってしまいましたが、この考え方は、宅建受験だけでなく、後々の仕事でも役に立ちました。
  通産省には同期が40数人います。同期から数名は海外の大学へ留学させてもらえて、MBAなどの勉強ができるのですが、私は英語の成績が次点で、2年間の本格的な留学はできませんでした。「それなら日本で『補修』をしよう」と考えて、中小企業診断士の勉強をすることにしました。宅建での失敗がありましたので、今度は最初から予備校に通いました。
  私が通った高田馬場の教室には銀行、リース、酒販の卸、食品などの人たち10数人がいました。わざわざ教室に通うからには、人間関係も財産になると考えました。知識だけなら通信教育でも良いわけですからね。それで私は試験に関係する時事問題や経済成長率などの資料、あるいは「中小企業白書」などのコピーを教室に持っていき、皆に配って勉強するようにしました。公表されている資料でも、あると参考になったりするわけです。教室にいる人たちと競争しているわけでもありませんし、皆のレベルが上がると自分にもメリットがあると思いましたから。そうすると、ほかの人たちも、自分の会社のリース制度や金融商品のパンフレットを持ってきたりするようになりました。結果的に、中小企業診断士試験には、1次2次試験とも1度で合格できました。そのときは、1年で80冊ほど、教科書やビジネス書を読みました。これは、あとで助けになりました。いろいろ、しくじった話ばかり多くて恥ずかしいのですが、まあ、転びながらでも相手の裾はつかんでいる、というようなところはあるかも知れませんね。

(7月11日更新 第2話「俯瞰図から思想図へ」へつづく)




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