ところで、中小企業やベンチャーともに、いわゆるオーナー経営者の役割が、これから一層大切になると思います。オーナー経営者は、資本と経営の権限を両方持ち、経営の責任を長いあいだ持つという意味です。経営者には、創業、日々の管理、長く経営を持続させる、という役割があります。とくにオーナー経営者ならではの役割は、最後の「長く経営を持続させる」ところにあります。10年単位で考えて、企業自体をどのような姿にしていくかということです。その点で、オーナー経営者が、本当にオーナーならではの仕事をできているかということです。この点は、オーナー経営者向けでない仕事と対比すると分かりやすいと思います。会計、労務、法務、知的財産などは部門戦略なので、それこそ部分であるということが分かりますが、経営戦略となれば、それをやっていれば良さそうに思えます。しかし、オーナー経営者には、さらに上が必要と思います。自分の会社は社会にどう寄与するのか、それには、どのような体制と求心力がいるのか、また、変えない(軸になる)ことと、そうでないことを定義し、実現に向けた問いをたてる役目です。 問いを発するのはオーナー経営者にしかできず、答えを考えるのはオーナー経営者でなくてもできることです。答えを考えるのは取締役経営企画担当以下の、いわば使用人の仕事です。実際には、答えを考えるのもオーナー経営者が一番優れていることが多いですが、ただ、それは「ひとり何役」つとめるうちのひとつで、オーナーでなければならない役割ではありません。オーナー経営者が個々の問題に入り込み、優れた判断をしながらも船全体が変な方向に向いていた、というのでは困るわけです。
(7月25日更新 第4話「ベンチャーの彼岸」へつづく)
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