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Front Interview
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Vol.017 独立行政法人中小企業基盤整備機構 理事 後藤芳一第4話 ベンチャーの彼岸
コラム(4) パーソナル・データ(4)
ベンチャーのバイタルサイン
 こうした文脈で、あらためてベンチャーの役割と意義を考えますと、私が注目するのは、特にこの国では、大手企業を中心にものごとが動きがちのところに、新しい風を吹き込む可能性があることです。スピード、イノベーションへの感度、チャレンジ精神、世界標準の発想など、ベンチャー企業が得意なところと、これから世界の市場での競争に必要なことが重なります。 ベンチャーは、規模が小さい点は中小企業と通じますが、大手企業を含めた取引チェーン全体のなかで主導権をとるのは、伝統的な中小企業には簡単ではありません。一方、ベンチャーでは、たとえばバイオベンチャーがキー技術を握って、量産は大手に任せるということもあります。産業構造の点からも、よい役割分担ができますし、何より、規模が大きくなくてもリーダになれる、どこからでもしかけてトップをめざせるところが大切です。 こうみてきますと、どうしても「ベンチャーとは何か」という問いに戻ります。どこまでの範囲をとるかで、その役割や意義が変わります。それには、ベンチャーのことを常に考えていて、情報のハブになる組織が必要です。そのために2007年4月に中小企業基盤整備機構のなかに「創業ベンチャー推進課」を設けました。定義、意義、歴史、統計、人材、政策など、基本的なところから押さえていくつもりです。いつまでも「ブーム」を繰り返しているような存在ではまずいわけですので。


自らの判断で軸を決める

 あらためて、ベンチャーならではの役割は何か。個人も組織もそうですが、産業、経済、社会のなかで、他にできない役割をみつけ、それを果たすことで存続できるわけです。我々自身は、ファンド事業、創業・ベンチャー推進課の設置、今年度から「創業・ベンチャー国民フォーラム」の事務局などをしています。今年の初めには、ファンド事業の意義を確認して評価を行う有識者の会を設けました。夏から秋には報告書をまとめます。 また何より、ベンチャーを伝統的な中小企業と対比しつつとらえる視点も、中小機構の「ならでは」として、大切にしたいと思います。業界も世間も、ベンチャーを、テクノロジー系と同義に狭く考えがちです。ベンチャーであることの独自性が立証できなければ、中小企業の部分であるかも知れないわけです。  ベンチャーやキャピタル業界への期待は、個々の経営に尽力されていることは前提として、自ら働きかけて経営環境を作りだしていくことです。それには、業界横断的な取り組みも重要です。この業界で、よく「志」といいます。自分の、自社の、周囲の関係者の、で終わるのではなくて、社会を大きく動かしていくという大きいスコープ。内向き発想ではなくて、世界や社会からの視点で志を立て、それを形にしていきたいものです。

次号(2007年8月1日発行)は、グラムコ株式会社 代表取締役社長の山田敦郎さんが登場いたします。




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