起業家・ベンチャーキャピタル・投資家を繋ぐコミュニティ・マガジン

Front Interview
第1話 第2話
第3話 第4話
Vol.020 IBM Venture Capital Group 日本担当 ベンチャー・ディベロップメント・エグゼクティブ 勝屋 久第3話 キャピタルとは何か
コラム(3) パーソナル・データ(3)
ベンチャーキャピタルとの出会い
 ネットジェンを立ち上げた1999年、当初は、何とかベンチャー企業と関係を作ろうとそれこそ闇雲に近い状態で営業に出向いたり、経営者の方々にお会いしていたのですが、そうした現場でいつも遭遇する人たちがいることに気がついたのです。聞いてみるとそれがベンチャーキャピタルの方々だったのです。当時よく顔をお見かけしたのが照沼大さん(現・日本ベンチャーキャピタル)たちでした。
  当時の私は金融についての知識もなく、ベンチャーキャピタルといってもジャフコの名前を聞いたことがある程度でした。ましてや金融については「恐ろしい世界だ」という強い先入観がありました。
  1999年の後半ぐらいから2000年にかけてベンチャーキャピタルの方々ととことん議論をする機会がありました。そこでベンチャーキャピタルの役割を学ぶことができ、ベンチャーキャピタルの皆さんとは世界観が一致することがわかってきたのです。そうなると、これまでとは逆にベンチャーキャピタルがとても魅力的な世界だと感じるようになりました。
  当時の私たちはベンチャーの生態系といかに向き合い、どのようにアプローチをすべきかを考えていました。また、投資という手法は取らないと決めていました。そうした時期に、ベンチャービジネスの目利きであるベンチャーキャピタルという存在と出合ったわけです。

IBM Venture Capital Group

 ベンチャーキャピタルの皆さんと知り合うようになってわかったことが、素晴らしいベンチャーキャピタルの周りには、素晴らしいベンチャー企業が集まっているということでした。将来性のあるベンチャー企業を個々に探すのもひとつの方法ですが、それ以上に優秀なベンチャーキャピタルとの関係を構築する方が、いいベンチャー企業発見の確率が高まることに気づいたのです。この発見の後は、ベンチャーキャピタルとの良好な関係づくりにも力を注ぐようにしました。
  その頃日本IBMの中でベンチャーの世界、とりわけベンチャーキャピタルと深い関わりがあったのは実質私だけでした。ある日、当時の常務の木村正治さん(現・アッカ・ネットワークスCEO)から「米国本社でベンチャーキャピタルグループができた。これは勝屋君に最適の仕事だと思うからやってみないか」という話がありました。Venture Capital Groupというのは2000年にルー・ガースナー(前IBM CEO)が設立したIBMコーポレーションのグローバル戦略チームの一つです。ネットジェンで私が気づいた「優れたベンチャーキャピタリストのもとには、素晴らしいベンチャー企業が集まる」ことを米国本社でも早くから気づいており、この関係を中長期的にビジネスに結びつけようと組織されたものでした。
  グループはベンチャー企業への直接投資は基本的に行わず、ベンチャーキャピタルとの良好な関係を構築し、それを梃子にして将来性のあるベンチャー企業を発掘したり、ベンチャー企業とIBMとのパートナーシップを築いていくこと、そして市場がいまどうなっているのか、将来どうなっていくのかを把握することを狙いとしていました。このVenture Capital Groupのメンバーは世界で約30人います。メンバーは米国がいちばん多くインドのサポートも行っています。あとはヨーロッパにも拠点があり、まさにグローバル組織です。




HC Asset Management Co.,Ltd