訪問販売の仕事を始めて間もない頃です。あるお宅で自分の年齢が16歳であることを話したところ「若いのに大変だね」と言われ契約にこぎ着けることができました。それからは16歳という若さと、高校へも行かずに働いていることを積極的にアピールするようにしました。年齢の割にふけた顔をしていたので初対面だと25〜26歳に見られるのですが、できるかぎり自分の年齢をアピールできるように話を持って行きました。普通の人なら新聞配達をしている小学生など見ると「頑張ってるな。ジュースの一本でも買ってやろうか」と思いますが、そんなふうに見られていたのでしょうか。もうひとつ心がけたことは、お客様を「奥さん」と呼ばずに、「お母さん」と呼ぶことでした。
「この営業の仕事を始めてから、「商品を売ってはダメだ、自分自身を売らないと商品は売れない」と気づいたのです。扱っている商品はホームセンターに行けば似たようなものが、それこそ安く売られているものでした。幾分品質は良かったのですが、それでも私の売っている商品の値段はホームセンターの2倍から3倍はしました。そこまで高くて良いのだろうかと思ってはいたのです。また先輩からは「判子を押して貰ったらすぐに帰ってくるように」とも教えられていました。高い商品ですから、契約をとって少しでも相手に考えさせる時間を与えると、キャンセルされてしまうことがあるからです。
そんな仕事に疑問は抱くのですが、何ぶん社会経験はまったくないですし、他の会社と比べることもできません。普通の会社も同じようなことをしているのだ、これが会社というものなのだと思い込んでいました。
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