我々の世代は第2次大戦中に小学生時代を過ごしたので、軍国主義教育を受け、自分から何か行動するという自由はありませんでした。戦後、米軍が入ってきて様相が一変し、昨日まで生徒を呼び捨てにしていた教員が、急に猫なで声で、「○○くん」などと呼び始めました。そういう大人の変節を嫌というほど見ていましたね。そのうち、予科練に行った上級生が中学に戻ってくると、彼らは戦争で人生が狂ってしまったことから、その鬱憤を晴らすために、下級生をやたらといじめるのです。そういう混沌とした状況の中で教育を受けたので、既存の権威に対して疑問を感じ、反発を感じるようになりました。
戦争中、みんなが偉人と信じて疑わなかった東条英機が敗戦後、米軍が逮捕に来たら、慌てて拳銃で自殺を図るという事件がありました。国民に申し訳ないといって切腹した陸軍大臣もいたくらいなのに、本当に責任を感じているなら、何故もっと早く死ななかったのかと思いましたね。
そういう筋をきっちり通した人間と、そうでない人間を見てきているので、昭和一桁世代というのは、自分たちで国を支えようという気概があったのです。だから、高度成長期に会社にどっぷりはまり、ひたすら頑張っていました。役人だって、今と違って、天下国家を論じたものです。
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