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VC vision
前編 後編
第26回 インテグリティ、イノベーション、インキュベーション 後編 リスクという名の可能性
ngi capital株式会社の特徴は、
その投資メンバーに起業経験者をそろえていることである。
ngi capitalは、新たな事業化を進める際に
起業家たちが求めるあらゆるサポートを、
事業者としての目線でリソースの提供を行っている。
後編では、アーリーステージから起業家と一緒になって
新ビジネスの事業化に取り組む
ngi capitalの投資スタイルを解き明かしていく。

interviewer:森本紀行(ベンチャー座アドバイザー、HCアセットマネジメント代表取締役社長)
パートナーズ主な投資先事例
我々がわかる事業でないと投資しない

【森本】 投資対象はインターネットビジネスにフォーカスしているのですか。
【金子】 社名をネットエイジからネクストジェネレーションイノベーター(ngi)に変えたのは、グループとして看板から「ネット」をはずす意思決定をしたことでもあります。投資先も、これまでのインターネット以外にも広げていこうと考えています。ただ、ngi capitalとしての強みは、インターネット事業ですし、ベンチャーキャピタルとしては、我々がわかる事業でないとなかなか投資することもできません。ですから、基本はインターネット、モバイル、webということになりますが、徐々に他分野への広がりも作っていきたいと思っています。
【森本】 投資先にコミットメントする際のハンズオンは、どんな考え方で取り組まれていますか。
【金子】 私が常日頃弊社のキャピタリストに話しているのは、我々はあくまで株主であり、社外の取締役であり、また、インキュベーターであるということです。ハンズオンとしては、具体的には、一緒に作った事業計画書どおりに事業が進んでいるかをチェックして、それを経営者に正確に伝えていくことが基本になります。そして、さらにこの先事業をどう進めるべきか、イグジットに向けて何が必要かを、前もって的確に伝えていくことが大切です。人を雇ったり、顧客を開拓したり、資金調達したりということは、基本的には経営者がやるべきことですから、我々がそれについてお手伝いをするとしても、深く関与することは避けています。あくまでも我々は外部の人間ですから、企業側に立ったポジションから意思決定のお手伝いをすることが基本です。
【森本】 企業価値を高めるための手法が各種あると思いますが、そこでのngi capitalの強みは何になりますか。
【金子】 我々は、特定のインターネット事業会社として成長してきたわけではなく、インターネット事業のインキュベーターとして成長してきた企業です。我々自身の事業を通して、楽天株式会社やソフトバンク株式会社、株式会社サイバーエージェントといった企業とお付き合いをしています。そういった企業に我々が投資しているベンチャーをご紹介させていただくということをしています。
【森本】 アーリーステージに特化していますが、アーリーだけで継続的に投資するのは、安定収益の観点からすると、難しくはないですか。
【金子】 そうですね。グループ全体の戦略としては、投資企業のステージを変えたり、産業を変えたり、あるいは上場株を取り扱うということもしていかなければなりません。しかし、ngi capitalとしては、あくまでもアーリーステージの投資に強みをもって取り組むスタンスを貫きたいと思っています。

常に次世代のビジネスを作っていく

【森本】 イグジット戦略についてはどのようにされていますか。
【金子】 我々が強みを持っているのはM&Aです。かなり前から、当社が作ったり、投資してきた事業をいろいろな事業会社に売却してきています。インターネットの世界は、結局、どこかのタイミングでそのビジネスをサポートしてくれたり、パートナーとなってくれる企業が必要になります。事業売却をベンチャー支援の一環に位置づけて取り組んでいます。単独でIPOを目指すのは、時間がかかりますし、必ずしもそれが、ITベンチャーにとってベストだとも考えていません。やはり、その事業がより広く世の中に広まることが目的ならば、ヤフー株式会社とか、楽天株式会社といった企業の傘下に入ることもポジティブなアプローチになると思います。
【森本】 大手企業への売却事例にはどのようなものがありますか。
【金子】 トラックレコードとしては、当社で運営していたネットマイルというポイントサイトがあります。現在は三井物産株式会社の連結子会社になっています。また、売却した後に、その売却先でIPOしたケースもありますから、そういう意味では、当社は、アーリーステージでの投資に強みがあるといえると思います。
【森本】 イグジットした会社は何社になりますか。
【金子】 IPOをしたのは、弊社が創業出資を行った株式会社mixiと、小池が創業者であるネットイヤーグループ株式会社の2社になります。M&Aでは、サクセスフルなものでは10件くらいです。
【森本】 グループを含めて今後のビジョンをお聞かせください。
【金子】 過去9年くらいインターネット×ベンチャー×日本という三つのドメインでやってきた企業ですが、ネクストジェネレーションイノベーターという、常に次世代のビジネスを作っていくことを新たなコンセプトとして確立させています。そういう社会的使命を持ってやっていきたいと思います。また、日本やアメリカで経験してきたセンター的な役割を、今後はアジアで展開するよう積極的に進めていきたいと考えます。
【森本】 御社でいうイノベーションとはどういうものをさしているのですか。
【金子】 グループには、インテグリティ、イノベーション、インキュベーションの三つの理念が掲げられています。インテグリティは、誠実に信頼を築いていこうというもので、グループで一番大事にしているものです。イノベーションは、技術的なこともありますが、プロセス、ルーチンワークにおいても革新を継続させることを心がけよう、ということになります。インキュベーションは、これまで我々がやってきた新規事業を創出することで、今後は、これを海外にも視野を広げていこうということを打ち出しています。社名につけたイノベーターという言葉も、我々は社会の革新者でありたいということを理念として掲げているものです。


インタビューを終えて

今回の取材を通じて強く実感したことは、日本におけるIT産業の隆盛が、非常に若い世代によって牽引されているということである。ITビジネスのアイデアや技術開発は、パソコンをあらゆる生活の場面に取り込んでいる若い世代を抜きに進めることはできない。しかも、次々と生まれる新しいITビジネスの事業化のサポートは、この10年の間にITビジネスの事業化で成功した若い起業家たちが支えている。ファイナンスから企業の運営サポート、技術開発のアドバイス、顧客の発掘といった多面的なサポートを展開するIT事業者によるベンチャーキャピタルは、日本のIT産業の発展に欠かすことのできないファクターになっている。今回取材したngi capitalは、その代表例であるといえる。IT事業をめぐる若い世代の活躍は、今後も大いに注目すべきものとなっているといっていいだろう。(森本紀行)

次号第27話(2008年5月7日発行)は、ルネッサンス・エナジー・インベストメント、代表取締役社長の一本松正道さんが登場いたします。


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