【森本】 コーポレートベンチャリングについてはどのようにお考えになっていらっしゃいますか。
【鴇田】 コーポレートベンチャリングに関しては、銀行系、証券系、商社系のベンチャーキャピタルでも、事業化の実現性が高くなっています。実際、大手企業でカーブアウトさせて新規事業を立ち上げる事例も増えていますし、また、産業構造の変革に寄与するという意味で、これまでのベンチャー企業の持つ知財を大手企業の事業と結びつけるコーディネイト機能も期待されてくると思います。ベンチャーキャピタルが投資している企業を、大手企業と組ませたりして再生させていく事業も重要になってくると思います。そういう意味で、ベンチャーキャピタル業界がやるべき課題は多いのです。また、プライベートエクイティの分野でどの投資が儲かるか、というパフォーマンス狙いも大切ですが、企業を育てて日本の新しい産業を作っていくという気概を捨ててはいけないと思います。ベンチャーキャピタルは単なる運用業ではないと思います。ベンチャー企業を育成するのが、本来あるべきベンチャーキャピタルの姿じゃないでしょうか。それから、R&Dなどでも国からの資金を呼び込んでいくことも必要です。たとえば、バイオなどは日本では壊滅的な状況ですが、このように市場が低下していたとしても国がベンチャーを支える機能も必要だと思います。
【森本】 おっしゃるとおりだと思います。
【鴇田】 バイオ投資に関してはまだ際だった成果が出てきていない状況ですが、それでも、いままでベンチャーキャピタルがバイオに投資した資金が1,500億円くらいあります。その中には有効なシーズもあるはずです。やはり、製薬会社、厚生労働省等を交えてバイオベンチャーを支援するシステムを作っていかないといけません。
【森本】 投資先の企業価値向上のためには、アジアとの交流も重要ではないでしょうか。
【鴇田】 はい。もうアジア各国はお互いに「表敬」の段階にはありません。韓国でも日本とおかれた状況は同じで、欧米の目が中国、インドに向いてしまって完全に出遅れてしまっています。問題意識は日本と完全に一緒です。だから、お互いに投資し合う関係を構築していくことが必要です。韓国のソフト事業には最先端のものもありますし、逆に韓国が日本の技術に投資してもいいわけです。日本の製造業はこれまで大手企業を中心としてやってきて、ベンチャー企業がないに等しかったため、若い企業が育っていないのですが、もう、そういう時代ではないだろうと思います。今後は、その構造も大きく変わっていくだろうと思います。その意味でも、アジア地域からの投資を増やす交流は重要なポイントになります。
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