【森本】 大阪や神戸地区で生まれた研究成果、研究者、起業者たちを積極的に応援しようということですね。
【神保】 ええ。そういう地元で何かやりたいという人たちにどう関与するかという問題でいえば、池田銀行では、助成金制度を設けています。これは、ニュービジネス助成金とコンソーシアム助成金の2種類があります。ニュービジネス助成金は、新しいビジネスプランを出した人たちに対して資金を贈与するものです。コンソーシアム助成金は、研究レベルを高めて実用化できることを目的に大学、研究機関などでビジネスとしての事業化にもう一歩で実現できるという研究に助成金を提供するものです。
【森本】 これまでの実績はどのようなものなのですか。
【神保】 ニュービジネス助成金は、昨年の場合12プランに対して1,000万円、これまでの累計では80プランに対して5,300万円が交付されています。コンソーシアム助成金は昨年の場合、13プランに対して3,000万円が交付されたと聞いています。池田銀行が行っている助成金制度では、潜在的な投資先の開拓に随分活用させていただいております。助成金提供先のエクイティを取得して何らかのお手伝いをしていくなど、さらに踏み込んだ支援を行う機会を得やすくなりますから。
【森本】 地域的なムーブメントといったイメージですね。
【神保】 そうですね。一方的にラブコールしても、恋愛と一緒で、追いかければ逃げられるだけです。相手からの申請があれば、こちら側からも引き寄せていくことができますから、シナジーをもって相思相愛になれるきっかけをつくることが大事だと思います。
【森本】 大阪経済は、思わしくないといわれていますから、復活の起爆剤にもしたいですね。
【神保】 ええ、大阪経済は、非常に厳しい状況にあります。ファンドの運営とは関係ないことですが、大阪は製造業の町といわれながら、この50年間、その地位はずっと低下してきているのです。結果論としていえば、過去30年で大阪にとって一番ダメージが大きかったのは、工場三法という法律です。もともとは公害防止を主旨とする法律ですが、この法律によって大阪の産業は空洞化していきます。この法律が適用されたのは、東京、名古屋、大阪、神戸などでしたが、適用範囲が最も広くて影響が大きかったのが大阪だったのです。適用された企業の実数では東京が最も多かったのですが、大阪の場合は、この工場三法によって工場の更新投資ができないため、製造業がどんどん衰退していくことになりました。そして、この衰退を食い止めるために、大阪の事業者はかなり海外へ出ていったのです。
【森本】 工場三法は2003年に廃止されることになります。
【神保】 はい。おかげでかなり戻りつつあって、阪神地域での工場の回帰は勢いを増しつつあります。兵庫県、大阪の堺市などは全国レベルでいってもかなりの規模で工場の新設が進められていますので、製造業が再び回帰する動きが始まっているといっていいと思います。たとえば大阪湾岸部では松下、シャープなどが拠点工場を新増設しています。このため、大阪湾岸は「パネル・ベイ」と呼ばれていて、周辺産業までを含めればかなりの金額の投資が行われています。製造業復活の芽が、ようやく出てきています。我々としても、そういうところにどのように関与していけるかが重要だと思っています。
後編 「経営者の意志とデューデリジェンス」(8月20日発行)へ続く。 |