【森本】 今、池銀キャピタルの投資チームは何名いらっしゃるのですか。
【神保】 営業部隊は4名です。非常にこじんまりしています。地銀の中でいっても、小規模です。地銀系でいいますと、関東の上位行系では先行して組織的にやっていて投資実績もかなりあげています。これに比べれば、我々はまだ弱小の位置にいます。
【森本】 4名でどのくらいのディールを扱っているのですか。
【神保】 一人平均でいうと6件から8件を担当します。全体で年間25件から30件程度の投資実績を出しています。この数字は、一人当たりとしてはたぶん多いと思うのですが、多い理由は、夢仕込のファンドでは非常に短期のデューデリでやっているからです。大口の大きな資金の投資になると、デューデリに時間が必要だし、真剣な回収プランの検討も必要になります。しかし、シード段階にある企業の場合、5年以上先についての回収プランは、実際は、現実離れしていてほとんどプラン通りにはならないのではないでしょうか。ですから、アーリーステージ企業の場合ではそういうところを深く検討しないで、技術やビジネスモデルを評価して小額の投資ができるところへ主に投資しています。その投資先企業が何年か経った後に、その技術やビジネスプランで本当にステージに上がってくるかどうかに重点を置いて審査しています。ステージが上がったところで、もう一回出口を考えようというスタンスです。そこでは、転売するのか、あるいはIPOを目指したファンドで追加投資するのかを判断することになります。シード段階のビジネスの場合は、金融的な発想よりも、経営者がまじめに事業に取り組んで社会から有用だと考えられるようになるのか、雇用をどう増やせるのか、といったポイントをみることを大事にしています。その企業の技術やモデルの独自性を重点的に評価しますので、デューデリ期間も短縮できるわけですね。それが一人当たりにすれば件数的に、通常のベンチャーキャピタルファンドよりも投資件数が多くみえる要因だと思います。
【森本】 御社では、ユニークな研究会を開催していて、研究熱心という評判があります。
【神保】 本当なら有難いことです。我々のような、後発で弱小でノウハウもないベンチャーキャピタルで何ができるかという時、一つは、情報が「ひとりでに」集まってくることが好ましいわけです。我々は大手のベンチャーキャピタルのように絨毯爆撃で地域をシラミ潰しにして案件をファインディングしていくことはできません。座っていても情報が集まってくることが、我々にしてみればうれしいことなのです。そうなるためには、なんらかの、信頼できる組織であるという実績やブランディングが必要だろうということで、開かれた研究会をつくったのです。当初は同業者の方にお願いして講師になっていただいて、自分たちが学んでいたのですが、だんだん広がっていって、今では、毎月1回開催しています。
【森本】 ほう。
【神保】 池田銀行は、幸い独立系の地銀としての地位を築いてきました。このため、いろんな金融系列の方たちとも等距離の関係が保てています。そこに参加いただける方は、純実務レベルで役に立てるということで参加いただいております。幸いにも、中立的色合いであることで金融系列を越えた多くの方にご参加いただけるポジションにあります。結果的には、ほとんどのベンチャーキャピタル関係者に参加いただいています。こういう研究会を通じて情報が自動的に集まる仕組みとして活用できないかと考えてはいるのですが、実際にはそういう成果を出せてはいません。もっとも、この勉強会では、単に我々が情報を取り込もうというものではなくて、そこに参加している人が自由に情報を交換してください、情報交換の場を提供しますから、交換所としてご活用くださいともお願いしています。投資先企業には、社会に有益な存在になってくださいとお願いしているのですから、我われ自身も何か役立つことをできればと思っています。
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