【森本】 近年のベンチャーキャピタル業界の流れは、アーリーステージ、シードへの投資はかなり縮小して、レイトステージに向かっています。そして、資金回収の動きが活発です。
【神保】 しかし、こうした状況下でも、我々として必要だと思える投資を継続してやっていきたいと思っています。また、代表的なのは中国での投資になるのでしょうが、海外の投資で、円ではなくて現地通貨で投資する動きも多くなっていると思います。特に専業大手ではそういう動きを活発化させています。利益追求であれば、そういう投資が有利だろうとも思いますが、我々はまだノウハウも未熟ですから、この流れには乗らないで、もともとの当社の設立の趣旨を遵守して取り組んでいく姿勢でいます。今後環境が変わればどうなるかはもちろん分かりませんが、今はまだ当社の事業の範囲で活動していくということを守っています。大きな利益を上げるチャンスを逃すことになるかもしれませんが、銀行グループとして容認してもらえる範囲であれば、今までどおりの展開を進めていきたいと考えています。
【森本】 今後の動きについてと、新しいファンドについてはどうお考えですか。
【神保】 3号目の「夢仕込大学ファンド」を新たにつくる計画を進めています。これは大阪府立大学と大阪市立大学に協力を仰いで共同ファンドの形にする計画で進めています。
【森本】 投資先と一緒に成長していきたいというお話がありましたが、案件の審査にあたってはその点も精査されるわけですね。
【神保】 経営者が「やろう」という強い意志を持って経営に取り組んでいることを見極めてやっていくということですね。アメリカなどが代表的なのでしょうが、マニュアル化された考え方があって、いろいろなスコアリングでチェックしていくやり方がありますね。例えば、経営者が専業ではなくて、どこかの会社の役員をやっていたらダメだという考え方があります。我々も、経営を兼務されている人への投資には躊躇しますが、面談の中でその人の意思を確認することは欠かしません。兼務しているなら、いつ、専業としてやるつもりなのかを相対でお話をし、確認していきます。書類上のチェックだけで終わることはありません。面談抜きに、すべてのデューデリを終わらせないことを原則にしています。ただ、このやり方も必ずしも確実ではないので、手順は常に変化をしていますが。
【森本】 経営者を判断する際、特に重視するポイントはありますか。
【神保】 基本的に、上場したときにIRのプレゼンが下手な社長は難しいですね。自分がやろうとしていることを整理して、メッセージとして他人に伝えられない人ですね。これは口下手だからでダメだということではなくて、頭の中で自分のビジネスモデルができていないからできないのではないでしょうか。したがって、経営者の皆さんには、プレゼンの練習をするのではなくて、自分のビジネスモデルのブラシュアップをしてほしい、という要求をしています。そういうことを通じて、従業員の方とも一体感が生まれますし、我々も株主として、一緒にやりたいと考える経営者に安心して投資していくことができるのではないかと思っています。また、我々としては、こういう会社が好みです、という趣旨を対外的に公表して発信するという意味で、社長インタビューシリーズを池銀キャピタルのHPで公開しています。2カ月に1回の割合で記事を載せいています。
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