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VC vision
前編 後編
第31回 グローバルなベンチャーの架け橋となる 後編 人心を読んだ投資
グローブスパン・キャピタル・パートナーズは、
ボストン、パロアルト、東京に事務所を構え、
グローバルな投資活動を実践するベンチャーキャピタルだ。
その特徴は、キャピタリスト個人の能力に依拠して
ベンチャーの投資、支援を行う米国スタイルではなく、
チームによる総合力で組織的な投資活動を行う日本的な手法を取り入れていることだ。
代表取締役社長のアンディ・P・ゴールドファーブ氏に、
その特徴的な投資スタイルについての考えをうかがった。

interviewer:森本紀行(ベンチャー座アドバイザー、HCアセットマネジメント代表取締役社長)
投資先事例

チームワークで仕事を成し遂げる姿勢

【森本】 案件の発掘はどのような形で行っていますか。
【アンディ】 投資先案件の発掘は、3分の1は、直接の持ち込みによるものです。たとえば、以前の投資先が新しい企業を起こした場合であったり、投資先企業の紹介で当社を訪問してくる場合などです。また、他のベンチャーキャピタルからの紹介案件がやはり3分の1くらいあります。そして、残りの3分の1は証券会社などの金融機関や大手事業会社などからの紹介になります。これらのうち、当社が直接相談を受ける案件が有効な投資先になる例が多いですね。投資案件の検討は、毎週月曜日に、テレビ電話で三つの事務所のメンバーが参加する形で行います。各担当が持ち寄った案件を会議参加者全員で意見交換して審査していきます。話し合う内容は、その案件の魅力的な点そして、リスク面についての検討です。ここで重要なのは、案件の持つ問題点を厳密に見ていくことです。その問題点をクリアしていくことができれば、投資へと進んでいくきます。見るポイントとしては、経営者、技術、投資条件、競争力などに注意を払っています。
【森本】 投資案件についてのテレビ会議には全員が参加しているのですか。
【アンディ】 はい。参加者は、14人の投資チームに経理1名を加えた計15人で行っています。投資チームは、パートナーが7人で、アソシエートらが6人とCFO1名の構成になっています。そして、3カ月に1回、会議メンバーが全員集まって、同じフォーマットのチェックシートで投資案件全社をレビューする会議も設けています。そこで、各投資先企業の遅れている点、不十分な点を洗い出して、その対応策を議論します。
【森本】 投資先の企業成長への関与はどのような形で進めるのですか。
【アンディ】 重要なのは、投資後にその企業をどのように成長させていくかです。ここでは三つのポイントに絞って、我々の役割を定めています。一つは、取締役としての関わり方です。自分の視点から、どのように努力したらいいのかをアドバイスすることを重視しています。投資家を紹介する資金調達の支援が大事になりますし、顧客となる企業を紹介していく活動も重要な仕事になります。二つ目は、グローブスパンの持つ人材、ネットワークを使って、その企業が展開する市場にしっかりとした足場を築くための支援です。そして、三つ目は、取締役としてその企業に入っていても、自分ひとりの力で成功を勝ち取れるわけではないので、チームワークで仕事を成し遂げる姿勢を持つことです。全員が力を合わせることが大切なのです。

根回しやコンセンサス作りを大切に

【森本】 そのスタイルは、米国のベンチャーキャピタルとは違っていますね。
【アンディ】 そうです。日本的なスタイルといっていいと思います。根回しとかコンセンサス作りを大切にしています。我々の場合は、チームとしてのやり方に特色があります。米国のベンチャーキャピタルは、キャピタリストの個人の能力でベンチャー投資を進めるスタイルが確立されていますが、問題は、投資してからどのように成功に導くかです。そのとき、個人ではやはり限界があります。チームの総合的な力でいろいろな人間の意見を交えて企業支援を進めることは、より効率的だと思います。
【森本】 そのスタイルは、日本の投資家にも理解されやすそうですね。
【アンディ】 ええ、我々には、日本とアジアの橋渡しの役割があると考えています。こういう役割を戦略として掲げているベンチャーキャピタルは、ほとんどありません。そしてもう一つ、米国のボストンにおいても、日本人のスタッフも含めて我々の存在がよく知られていることです。そのため、日本の案件の話をボストンでスムーズに進めることが可能です。現地の人間と個人的な関係性があれば、それはビジネスを進めるのに非常に有利なことだからです。日本と米国のビジネスを有機的につなげることができるのは、我々の強みになっているのです。
【森本】 グローブスパンのメンバーは、日本と米国を合わせて全員で何名ですか。
【アンディ】 26人です。この中で投資チームのメンバーは、皆キャピタリストとしての資質に長けた人材です。私は、このメンバーの採用にあたって、全員と面接をしています。人員の募集では、小論文と面接を課していますが、ここで一つのポイントは、小論文の手書きの文字で性格判断をしていることです。こうした人間分析をすることで、グローブスパンの他のスタッフにも、どういう人間が入ってきたのかを理解させることができます。いくら優秀な経歴と実力を持つ人間でも、周りの人間とうまく協調できる人でなければ、必ず失敗します。そのために私は、面接で、その人間の本質を見極めるようにしているのです。スタッフになるメンバーが社内でどういう風に人間関係が作れるか、その点を私はとても大事なことだと考えています。同時に、採用される前に、グローブスパンの社風や文化を理解してから入社してくることになりますから、当社をとても働きやすい環境にあると感じてもらえると思います。
【森本】 採用の際の人材の選考には、どれくらいの時間をかけているのですか。
【アンディ】 それは、ケース・バイ・ケースです。ただ、何度も精査して判断しますから、多くの場合は半年から1年くらいかけています。
【森本】 人材の募集はどのような形で行っていますか。
【アンディ】 ほとんどが、我々自身にコネクションのある者か、または我々と関係のある者を通じて獲得しています。一からの募集だと、もっと時間をかけて、その人間をみなければならないですからね。



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