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VC vision
前編 後編
第33回 安田企業投資株式会社 前編 バランスのとれたゼネラルファンド
安田企業投資株式会社は、
安田火災海上保険(現・損害保険ジャパン)と安田生命(現・明治安田生命)が
日本のベンチャーキャピタルの草分け的存在だった
エヌイーディー(日本エンタープライズ・デベロップメント)の
事業を引き継いで設立されたベンチャーキャピタルである。
大手ベンチャーキャピタルでありながら、組織的な投資手法を取らず、
キャピタリスト個人がそれぞれ独自のビジョンでベンチャー投資を行うスタイルが特徴。
前篇では、安田企業投資設立までの経緯と、
設立後に目指した同社のベンチャー投資手法について話をうかがった。

interviewer:森本紀行(ベンチャー座アドバイザー、HCアセットマネジメント代表取締役社長)
投資先事例

純粋なベンチャーキャピタル投資を作り上げる

【森本】 安田企業投資という名称は、エヌイーディーの売却後にすぐつけられたものなのですか。
【糸川】 社名は1999年4月1日から現在のものになっています。安田火災海上保険では、安田火災ベンチャーキャピタルが1996年に設立されていて、安田生命にも安田キャピタルがありました。エヌイーディーの売却の話は、この両キャピタル会社が合併することを前提に進められていました。
【鈴木】 経過からいうと、安田火災ベンチャーキャピタルが当社の継続会社ということになります。
【森本】 「企業投資」というのは、珍しい名称ですね。
【糸川】 英語ではヤスダ・エンタープライズ・デベロップメントといいますが、エヌイーディーの日本エンタープライズ・デベロップメントを引き継いでいる形になります。それを日本語にしたときに「企業投資」という名称を使ったものです。
【森本】 新しく安田企業投資となった時に、どのようなベンチャーキャピタルを目指そうとしたのですか。
【鈴木】 基本的に当時は、生損保系のキャピタル会社という一つの括りがあったわけですが、そこでは、ある意味、政策的な投資も兼ねた部分があったと思います。エヌイーディーから事業を引き継いだときに、今後は純粋なベンチャーキャピタルとしてやっていこうという意識が強かったと思います。自己投資はせずに、ファンドで投資活動をやっていくスタイルを目指しました。ファンドは当然ながら、出資者へのリターンが最大の目的になりますから、そうすると、政策的な投資はありえないですからね。純粋なベンチャーキャピタル投資を作り上げるコンセプトでスタートしています。
【森本】 そのスタイルは、具体的にはどういう形で現在表れていますか。
【糸川】 エヌイーディーでの投資先は、どちらかというと銀行からの紹介案件がベースになっていましたが、安田企業投資となってからは、紹介はもちろん大切な要素なのですが、どちらかというと独立独歩型で案件の発掘を行っています。また、投資分野の専門性を磨いていくことに力を入れています。とくに2000年からはキャピタリストがそれぞれ得意分野を作っていくことを志向するようになっています。
【森本】 投資部門は、現在何名いらっしゃるのですか。
【糸川】 スタート当時、キャピタリストは25名くらいでしたが、現在は30名です。

ゼネラルファンドとしてアーリーからレイターまで

【森本】 安田企業投資になってから、ファンドの組成はどのように変わりましたか。
【糸川】 1号ファンドは2000年に組成しています。ファンドの出資者は、主には機関投資家で占められます。事業会社、地銀などの金融機関ですが、やはり、金融機関が中心ですね。
【森本】 どういうコンセプトのファンドですか。
【糸川】 YED1号からYED4号というのがメインファンドで、現在4号の新規組み入れが主体ですが、IT、コンピュータ関連、エレクトロニクス、ライフサイエンス、消費関連の分野に投資しています。いわゆるゼネラルファンドです。
【森本】 それは、1号から4号まで共通のことですか。
【鈴木】 ゼネラルファンドとしてアーリーからレイターまでを色々な業種を対象にすることは変わっていません。ただ、国内外のベンチャーを対象に投資を行っていますが、海外投資の比率が、各号で変わってきています。それから、2000年以降に流行ってきていたバイオ分野に関しては、比率が高い時と低い時でバラつきが出ています。
【森本】 出資者に関しても構成は同じですか。
【糸川】 出資者も、基本的に金融機関が中心であることに変化はありません。
【森本】 1号から3号までのファンドは、すでに償還しているのですか。
【糸川】 1号の満期は来年の予定で、他はまだ投資中です。
【森本】 ファンドの規模はそれぞれどれくらいですか。
【鈴木】 だいたい2年半から3年おきくらいのペースでメインファンドを立ち上げていますが、1号から順に154億円、122億円、140億円、122億円となっています。
【森本】 ファンドは全部で14本あるということでしたが、残りの10本はどのようなファンドですか。
【糸川】 海外に特化したファンドが2本あります。これは、それぞれITとライフサイエンスが対象となっています。ライフサイエンスはアメリカに限定していますが、ITのほうは地域の限定はしていません。それと、事業会社や地方銀行との二人組合のファンドが合計4本あります。その事業会社や地方銀行とのシナジー効果がある企業を対象に投資をしていこうというものです。これから伸びていくアーリーのベンチャーへの投資が中心です。その他には、エヌイーディー時代の投資先を引き継いだファンドや東京都がベンチャービジネスを支援するために作ったファンドがあり、残りの2本はバイアウトのファンドが1本、セカンダリーのファンドが1本あります。
【森本】 バイアウトとセカンダリーはいつごろ始めたものなのですか。
【糸川】 バイアウトは3年前で、セカンダリーは昨年ですね。
【森本】 それぞれ規模はどれくらいですか。
【糸川】 バイアウトは41億円で、セカンダリーは10億円です。それほど大きくはありませんが、本格的な展開はこれからと考えています。


後編 「事業の本質的な価値を高める」(11月19日発行)へ続く。


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