新宿支店の次に移ったのが神田支店でした。新宿の業務は主に個人のお客様が中心の忙しい支店だったのですが、神田支店のほうは企業取引がメインでした。本当は外国為替など国際的な仕事をしたかったのですが、実際に配属されたのが、取引先課でした。
神田支店の私の受け持ちエリアは、行内では枯れた土地といわれていたところです。どこの企業も長年の取引銀行が決まっていて、新規は取れないといわれていましたが、とにもかくにもやるしかないと考えました。そこでまず、担当エリアを回ってビルの看板や表札などをカメラで撮って記録したのです。それを銀行に持ち帰って、取引のない会社名や個人の自宅の名前をすべて調べ、新しいリストを作って一軒一軒回り始めたのです。
そうすると意外に新規の契約が取れるのです。枯れた土地といわれて誰も手を出さなかっただけで、じつはお客様がいっぱいいたわけです。さらには、ある程度回っていくうちに営業のコツのようなものもわかってきました。相手の顔を見て、ここは押すべきか引くべきか、相手が何を望んでいるのかが表情やしぐさなどからわかってくるようにもなりました。そして、事業というのは営業が基本だと思えるようになってきました。さらには、その営業に自分は向いているのだ、と確信できるまでになりました。 |