私は中学生の頃、病気で1年ほど入院をして、同期から1学年遅れてしまいました。高校に入学する時に、ちょうど父親がイギリスに赴任していたこともあり、「イギリスの空気を吸ってみないか。いい経験になるぞ」と勧められて10カ月ほどロンドンに住むことになりました。それでまた同期からさらに1年遅れることになってしまったのです。
日本に帰ってきて高校に入学すると、小学校時代の友人たちは大学受験の真っ最中というわけです。当時は同年代の人口も多く受験競争も厳しかった。それに人生で一番重要な競争は同期との競争だという雰囲気もありました。ですから10代の時に2年も遅れたという事実とその挫折感は非常に重かったですね。その重みやプレッシャーを感じたとき、「他人と競争するのはやめよう」と思うようにしたわけです。それでスッと気持ちが落ち着きました。
受験勉強も他人と競争するのではなく、自分が納得する方法でやるようにしました。例えば英語ならサマセット・モームの『人間の絆』を原書で読んで、それを受験勉強がわりにしていました。他人からは好き勝手にやっているように見えたと思います。この「昨日の自分と競争する」という意識は、社会に出た今もずっと持ち続けています。 |