私が興銀に在籍していた当時は、銀行業界が非常な焦りを感じている時期でもありました。企業がエクイティ(新株発行による資金調達)で資金を調達し、借入金を次々と返済していくという流れが本格的になっていたからです。とくにこの動きは銀行の中でも、長期固定金利での貸し付けを行っていた「長信銀」にとっては大きな打撃でした。そのまま何もしなければ先細りになっていくのは目に見えているわけですから。
興銀でも様々な新しい方向性やビジネスを模索していました。たとえば優良な同族企業などに積極的に営業をかけていく、あるいは制度が許せば本格的なインベストメントバンクに脱皮することも考えていたと思います。
私は審査部にいて、営業や総合企画部から回ってくる案件について、調査や分析をしていましたが、そんな仕事をしていた1989年6月のことだったと思います。英国の経済誌『エコノミスト』にインターナショナル・プライベートバンキングの特集記事を見つけたのです。欧米では富裕層向けの金融サービスが盛んであるという内容の特集でした。
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