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Front Interview
第1話 第2話
第3話 第4話
Vol.009 エス・アイ・ピー株式会社 取締役会長 齋藤 篤第2話 金融の潮流を変える
コラム(2) パーソナル・データ(2)
ベンチャーキャピタルを投資信託で
 今原さんは、海外の金融業はどのようにして利益を上げているのだろうか、それを視察しようということでヨーロッパと米国を回ることになりました。あるきっかけでフランスのパリバ銀行で聞いた、「自分たちは米国のベンチャーに投資して収益を上げている」という話に興味を持って、米国に行って投資をされているというバイオ系の企業に行くと「うちにはパリバなどという株主はいない」というのだそうです。それで、その会社のCFOに確認したところ「パリバはファンドで投資しているのではないか」という話になったわけです。
  今原さんはその時初めて投資信託とかファンドというものを意識したのでしょう。帰りの飛行機の中では、そのことばかり考え、ついに決意したのです。帰国すると挨拶もそこそこに私に向かって、「米国ではベンチャーキャピタルは投資信託でやっている。お前は投信部長だったのだからすぐに開発しろ」と命令が下ったわけです。

日本に本当に必要な金融制度
 確かにベンチャーキャピタルをファンドで行えば、管理報酬という形で手数料収入を上げることができますし、それをJAFCOの収益の柱にするというという考えも納得がいくものでした。
  ところがこれには当時野村證券の会長でJAFCO取締役でもあった北裏さんが猛反対したのです。北裏さんには山一証券の日銀特融の時のことが頭にあったのでしょう。先ほども話しましたが、当時はすべての投信が額面割れを起こし、北裏さんはその償還問題から経営者責任まで大変な苦労をしたわけです。ファンドを作ってベンチャー投資をするということは、そうした問題を抱えることにもなりますから反対するのも当然です。北裏さんは、「投資信託のことを最もよく理解しているはずの齋藤がなぜこれをやる」と猛烈に反対されました。
  しかし私と今原さんは、なんとしてもファンドによるベンチャーキャピタルをやろう、日本に新しいビジネスモデルを作ろうと決意していましたので、ハンズオン(育成)機能を持ち出すなどの理論武装をして北裏さんを説得しました。北裏さんも最後には了承し、「日本に本当に必要な金融制度なら、きっと根付くでしょう」とまで言ってもらうことができました。
(11月15日更新 第3話「ベンチャーキャピタル史を歩む 」へつづく)  




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