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Vol.009 エス・アイ・ピー株式会社 取締役会長 齋藤 篤第4話 ベンチャーキャピタルの産業化
コラム(4) パーソナル・データ(4)
米国には「ベンチャービジネス」という言葉がない
 日本にベンチャービジネスという言葉を定着させたのは中村秀一郎(元多摩大学学長)さんや、清成忠雄(元法政大学総長)さんの研究グループと通産省の政策担当者の方々が一緒になって定義させたのだと思います。中村さんや清成さんが中心になって、ベンチャービジネスとはいかなるものか、その概念を規定し政策にも大きな影響を与えてきました。じつはこの概念が先行してしまったことでいくつかの問題が出ているのではないかと考えています。
  たとえば米国へ行ってみるとわかりますが、「ベンチャービジネス」という言葉はありません。それでは米国ではベンチャーキャピタルは何に投資をしているのかという話になりますが、基本的には儲かる中小企業、成長すると思える会社に投資しているわけです。そういう点では日本ではベンチャービジネスという概念が先行してしまったばかりに、起業する側も投資をする側も、ちょっと堅苦しく考えすぎている面があるのかもしれません。

ハンズオンに基づく付加価値創造
 またもう一つの問題が、ベンチャー企業側だけが脚光を浴び、ベンチャーキャピタルの存在が忘れられていることです。米国では企業とベンチャーキャピタルというのは「同じ船に乗る仲間」という意識を持っています。しかし日本ではベンチャー企業ばかりが表に出て、片輪走行の状態になっているのではないでしょうか。ベンチャー企業とベンチャーキャピタルはともに手を携えて進むべき仲間であり、その両輪が上手くかみ合った時にはじめて、ベンチャー企業は成功の果実を手にでき、ベンチャーキャピタルは産業として自立できるのではないでしょうか。
  また一部の方は、ベンチャーキャピタルの仕事を「企業の目利き」だと勘違いしていますが、本当のベンチャーキャピタルというのは目利きだけではなく、ハンズオンに基づく付加価値創造にあるです。米国を見るとわかりますが、ベンチャーキャピタルの投資判断はリスクをとれるかどうかだけでなく、自分が経営に参画してリスクを小さくして成長を促進する事ができるかどうかも重要な判断の要素になっています。ハンズオンを行えないベンチャーキャピタルというのは意味がないと言っていいでしょう。



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