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Vol.009 エス・アイ・ピー株式会社 取締役会長 齋藤 篤第4話 ベンチャーキャピタルの産業化
コラム(4) パーソナル・データ(4)
日本の企業にとって大変な変革
 この10年ほどで、ベンチャーキャピタルを取り巻く環境は大きく変わりました。私がベンチャーキャピタルに関わり始めた頃は、入れ物はあるが制度やインフラが整っていないという状態でした。しかし橋本総理から小泉総理と続いた様々な経済政策、規制緩和がベンチャーキャピタルにとっての追い風となっています。安倍総理も小泉総理の改革路線を継承すると言っていますから、この流れは止まらないでしょう。まさに池田内閣以来の成長政策によって、日本経済や企業の成長を後押ししようとしているのです。今後、日本のベンチャーキャピタルは、米国以上の運用成績が上がるようになると私は信じています。
  この日本でベンチャーキャピタルが成功するためには、投資を受けるベンチャー企業側に解決していただきたい課題があります。日本の中小企業(未登録会社)には、これまで計算基準と会計義務の根拠法がなく、企業にとっての財務会計はないも同然でした。幸い2006年、新しく会社法が施行され根拠法ができたほか、企業会計に責任を持つ会計参与も制度化されました。これは、ちゃんとした会計原則に則って決算をしないものは会社ではありませんと言っているのと同じです。日本の会社にとっては大変な変革です。今後は、会計参与を置かない会社はベンチャーキャピタルから投資を受けられないという状況に徐々に変わっていくでしょう。

一人前のベンチャーキャピタリストを
 一方、ベンチャーキャピタルの側でもいくつか解決しなければならない課題があります。一つはキーマンの育成です。米国のファンドではキーマンクローズ制がファンドの主流になっています。これは一人のキーマンがファンドの始めから終わりまでしっかりと責任を持つという制度です。日本の会社員では、良いファンドを作っても2〜3年で人事異動があり、担当が変わってしまいます。そうなると最初は良いファンドだったものが次第に魅力が失われてくるということもあります。また5年、10年という長期に渡るファンドであるにもかかわらず、いつの間にかファンドに対する責任というのも失われてしまいます。
  これではベンチャーキャピタルが顧客から信頼を得ることができません。私は日本でもファンドのキーマンを務められるような人材を多数育てることが必要だと考えています。また、どれだけこうしたキーマンが育つかが、日本のベンチャーキャピタルの将来を決めるのだと考えています。
  ベンチャーキャピタルでは、投資先のいくつかは必ず失敗するものです。先を見たりリスクを取るために綿密な調査をしたり、研究をしたりもしますが、投資をするその瞬間には、事業の将来もリスクも本当のところは見えないわけです。そんな仕事ですから一つの会社、一つの倒産にあまりこだわり過ぎると、次の投資ができなくなってしまいます。それでは一人前のベンチャーキャピタリストとしてはやっていけません。
  それではベンチャーキャピタリストに向く性格とはどういうものでしょうか。私の恩人のひとりである今原さんを例に取ると、じつに豪放磊落で、私が存じ上げているベンチャーキャピタリストにもそうした性格の方が多いようです。

次号(12月6日発行)は、ネットエイジグループ/ネットエイジキャピタルパートナーズの小池聡さんが登場いたします。



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