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Front Interview
第1話 第2話
第3話 第4話
Vol.011 セコム株式会社 取締役最高顧問 飯田亮第2話 一からデザインする
コラム(2) パーソナル・データ(2)
権利と義務と責任と
 家業の酒問屋での修業時代、父から教えられたことで一番心に残った言葉が、「ビジネスは『権利』と『義務』と『責任』がはっきりしていないといけない」でした。とくに営業を始めてからは「お前は金を受け取る権利がある。相手には支払う義務がある。これは契約なのだ」「お前は権利をしっかりと主張しなさい。そこを曖昧にしてはいけない」「曖昧なビジネスなどない」ということをよく聞かされました。
  ビジネスというものには「売る側」と「買う側」があります。そして、本来その関係は対等なものです。私が酒を売った相手に対しては、しっかりと権利を主張しなければいけない。もちろん売る側の私にも、「美味しい酒を納入する」という義務があります。しかし買う側が大変強いのが実情です。「お前は納入業者なのだから、オレの言うことはなんでも聞け」といわれて、それをそのまま聞いてしまう人があまりに多い。それはビジネスとはいえないですね。

自分を燃焼させたい
 酒問屋は割に合わないと思ったもう一つの理由が「お金を取れる保証がまったくない」ことでした。事実、酒を卸している二次問屋には、経営の安定していないところが多いといわれています。父の教えどおり、相手の所に出向いていって談判したこともありました。それでも実際に金がないのですから払いようがないといわれ、ずいぶん貸し倒れを作ってしまいました。
  ある時、どうしても支払いができないという取引先で、「この棚にある商品はわれわれの物だし、このレジスターの中の金もこちらのものだ」と勢いで言ってしまい、警察を呼ばれそうになったこともありました。それぐらい自分の仕事に責任を感じていたということです。
  岡永には都合6年いました。最後の1年ぐらいから、どうしても自分で新しいことがしたくて仕方がなくなりました。兄弟4人が父の会社にいて、私は末弟でしたから自分の考え通りに仕事をすることはできませんでした。自分を押さえたままでは結局自分を燃焼させらないという思いがだんだんに強くなってきました。そして、自分で独立して事業をやりたいと思い始めるようになったのです。

事業家とはわがままなり
 兄弟で同じ仕事をやっていると「そのうち必ず喧嘩になるぞ」という思いがありました。兄たちも同じような意識があったのでしょう。私より先に、まず次男が独立し、次に私が独立することになりました。私の後には三男も独立しています。
  しかし、私は、何か目標ができると脇目もふらず一直線に突っ走ってしまうところがあります。そして、思いっきり頭を壁にぶつけても、そのことがわからないでいる。頭から血が出ているのを見て、初めて痛いということに気づくのです。そんな私の性格を知っていたからでしょう。父は私の独立には大反対しました。
  独立したいという思いは、私のわがままな性格のあらわれでもあったと思います。そもそも、事業家というのはわがままなものだと思います。自分で自由にデザインを描いた仕事をしたくなる。それも一からデザインをしたがるものですからね。しかし、それができると事業はとても強いものとなる。自分の好きなことだからこそパワーが十全に発揮できるのです。




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