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Vol.011 セコム株式会社 取締役最高顧問 飯田亮第3話 カルチャーを育む
コラム(3) パーソナル・データ(3)
人生の師は数え切れない
 自分がここまで成長できたのは、その時々で多くの方々に助けていただいたことと、またそうした人たちから様々なことを学ぶことができたからだと思っています。そういう意味で「人生の師」は数え切れないぐらいいます。
  そうした中であえておひとかたの名を挙げるとすれば上村健太郎さんでしょうか。上村さんは元内務官僚で防衛庁の初代航空幕僚長だった方です。防衛庁を退職後もJAFの会長に就かれたりと大変お忙しい方でした。
  私が創業したばかりの頃、警備保障会社という日本にはなかった会社を創業したため、いわば出る杭になっていたわけです。当然、それをおもしろく思わない人たちもたくさんいました。上村さんは、そうした人たちから私を守る盾にもなってくれました。ある日、宴席にお招きした時の話ですが「お前は裃を着ているからつまらんのだ。こういう席では浴衣を着ろよ」と親しみを込めて言われたことは今でも覚えています。酒の飲み方から社会人としての身の処し方まで、じつに多くのことを教えていただきました。

社員である前に人間である

 今、セコムの国内の事業所は、北は稚内から、南は石垣島まで広がっています。あるセコムの社員がお客様の所に機械のメンテナンスで伺い、缶入りのお茶を出されたそうですが、その社員は決してそれに口を付けなかったそうです。そのお客様がたまたま私の友人であったため知りえた話なのです。その友人から、「君の社員はお茶を出されたそうだが、缶入りだから飲まなかったのかね」と聞かれました。もちろん、そのようなことはありません。言下に「うちの社員たちは、仕事に臨んでいるときはどんなものを出されても口にはしないんだよ」と答えました。しかし、この話を聞いたときはほんとうに嬉しかったですね。私の目の届かないところでも、社員はちゃんと規範に則って正しい行いをしているのだと知ることができたからです。
  セコムは人々の安全を守るというセキュリティの会社です。そのためにはまず、人から信頼されなければいけません。だからこそ、社員一人一人が、間違ったことをしてはいけないし、品格を持たなければなりません。私が考えているセコムのカルチャーは全体に浸透したと思っています。まず安心していられますね。

 セコムの理念の第一に「正しさの追求」があります。この「正しさ」ということは、セコムにとって正しいのではなく、まず社会にとって正しいことを追求するという意味です。もしかするとセコムにとって正しくても、社会にとっては正しくないことがあるかもしれません。その時には、「社会にとって正しいと思われることをしなさい」と社員には話しています。セコムの教育の基本は「セコムの社員である前に人間である」ということです。





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