起業家・ベンチャーキャピタル・投資家を繋ぐコミュニティ・マガジン

Front Interview
第1話 第2話
第3話 第4話
Vol.011 セコム株式会社 取締役最高顧問 飯田亮第4話 育て、育てられ
コラム(4) パーソナル・データ(4)
雄々しく立つ
 私の父は曲がったことが大嫌いな人間でした。タバコは吸いましたが、キセルが嫌いというぐらい徹底していました。キセルは先が曲がっていますからね。そんな父から子供の頃、厳しく躾けられたことで思い出すのが、「しゃがむな」ということでした。
  小学生の頃、井の頭公園に家族で遊びに行った時のことです。帰り道、私は遊び疲れて吉祥寺駅のホームで、ついしゃがみ込んでしまったのです。すると父が烈火のごく怒り「しゃがむな」と怒鳴りつけたのです。私はびっくりして立ち上がりました。そのあと、父は私の耳元で小声で言いました。「周りでしゃがんでいる人たちの顔を見なさい。みな良い顔はしていないだろう。お前にはあんなふうになってもらいたくないのだ」と。確かにしゃがみ込んでいる人たちの顔は、生き生きとはしていませんでした。父にそう教えられて以来、私はどんなに疲れてへこたれても、しゃがまない、またしゃがみ込むような精神状態にはならないと心に決めたのです。
  セコムの教育というのは、この父から教えられたことが基本になっていると言っていいでしょう。今、セコムという会社は天に恥じることがない会社に育ちました。創業時には反対をした亡き父も、今は喜んでくれているに違いありません。

仕事に育てられる
 私は、企業と社会の間には「恋愛感情」が必要だと思っています。企業というものは社会から愛される存在となるよう努力をしなければなりません。社会から「憎らしい」とか「ないほうが良い」と思われるようではいけません。もちろんただ「私を愛してくれ」といっているだけではなにも始まりません。まず、企業の側が社会を愛していく必要があります。「企業が社会を愛し」、さらに「社会も企業を愛してくれる」なら、企業というのは社会から伸ばしてもらうことができます。
  また、セコムは自分が一から作り上げた会社だけに愛しているという感情があります。また、セコムを育て上げることで自分自身も育ってきたということを実感しています。セコムの仕事は、天に一点も恥じることのない仕事です。セコムを創業して良かった。この仕事を選んで良かったとも思っています。
  しかし企業家にとって満足は敵です。満足してしまったら、進歩が無くなり企業というのはダメになってしまう。ですから私もセコムの現状には満足していません。まだまだ良くしていける会社だと思っています。

良い仕事をする会社
 企業を良くしようと考える時、その指標や目的というものを物欲的なところに置いてはいけないと私は思っています。たとえば売上をいくらにするとか、利益をいくらにするとか。そうした物欲的な目標というのは実現可能なものです。だから、それを達成してしまうと、その時点で満足してしまうことになり、慢心が生まれてくる。
  私はセコムを「大きな会社」「儲かっている会社」と言われるより、「良い仕事をしている会社」と言われたいと思っています。「良い仕事をする会社」にすることが目標なのです。この指標は売上げや利益といった数字で計れるものではありません。ゴールというのがありえないのです。つまり、満足することはないと言うことです。
  そのために、社員に繰り返して言っていることが「否定の精神」です。すべてを否定しろ、自分自身をも否定しろ、そうしなければ新しいことは生まれてこないのです。



HC Asset Management Co.,Ltd