私は、売上を伸ばすために泥棒のようなまねをしてもらっても、ちっとも嬉しくありません。お金を稼ぐのにも正しいやり方があるはずだと言い聞かせています。それを一人ひとりが考え、追求していくことこそがセコムのカルチャーなのです。
こうしたやり方を見ていて「飯田が言っていることはきれいごとだ」と批判する人もいます。そういうことをいう人にかぎって、夜ごとパーティーに出向いて、グラスを傾けながら、会場中をきょろきょろと見回して、自分の社会的地位を確かめるような行いをしているのです。そんなことに時間を費やすぐらいなら、私は社員に向かって「セコムのカルチャーとは」「セコムはどうあるべきか」という話を懇々としています。人を育てるという、経営者として一番難しいことにもっと時間をかけるべきだと思います。
とはいっても、こうした私の考えをどのようにすれば簡単なロジックで社員に伝えられるかはほんとうに難しいことです。時間さえあれば、そのことばかり考えています。回りくどいやり方では、上手く伝わりません。できれば、2ステップぐらいで伝えたいのですが、どう考えてもそれは無理です。ですから、せめて3ステップから4ステップで伝えようと常に考えます。それに30、40人ならば、私が直接伝えることもできますが、組織が大きくなってくるとそれもできなくなります。
それと、一度話しただけですべてを理解してもらうことが無理だということもわかりました。そこで、30分間話をして、そのうちの5分間分だけでも理解してもらえればいいと考えるようになりました。30分の会話を積み重ねていけば、相当量のロジックが伝わるようになるわけですからね。 |