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Vol.011 セコム株式会社 取締役最高顧問 飯田亮第3話 カルチャーを育む
コラム(3) パーソナル・データ(3)
経営者の責務とは
 私は、売上を伸ばすために泥棒のようなまねをしてもらっても、ちっとも嬉しくありません。お金を稼ぐのにも正しいやり方があるはずだと言い聞かせています。それを一人ひとりが考え、追求していくことこそがセコムのカルチャーなのです。
  こうしたやり方を見ていて「飯田が言っていることはきれいごとだ」と批判する人もいます。そういうことをいう人にかぎって、夜ごとパーティーに出向いて、グラスを傾けながら、会場中をきょろきょろと見回して、自分の社会的地位を確かめるような行いをしているのです。そんなことに時間を費やすぐらいなら、私は社員に向かって「セコムのカルチャーとは」「セコムはどうあるべきか」という話を懇々としています。人を育てるという、経営者として一番難しいことにもっと時間をかけるべきだと思います。
  とはいっても、こうした私の考えをどのようにすれば簡単なロジックで社員に伝えられるかはほんとうに難しいことです。時間さえあれば、そのことばかり考えています。回りくどいやり方では、上手く伝わりません。できれば、2ステップぐらいで伝えたいのですが、どう考えてもそれは無理です。ですから、せめて3ステップから4ステップで伝えようと常に考えます。それに30、40人ならば、私が直接伝えることもできますが、組織が大きくなってくるとそれもできなくなります。
  それと、一度話しただけですべてを理解してもらうことが無理だということもわかりました。そこで、30分間話をして、そのうちの5分間分だけでも理解してもらえればいいと考えるようになりました。30分の会話を積み重ねていけば、相当量のロジックが伝わるようになるわけですからね。

寝ても覚めても組織作り
 セコムを創業してもっとも苦労してきたことが「組織を作ること」でした。私の考える組織というのは、社員全員が一つの考えの下に仕事に取り組むものです。社員がてんでんばらばらに好き勝手に仕事をするようでは組織とはいえないですからね。しかし、組織作りとは、「一つ積んでは母のため」で歌われているように、賽の河原で石を積んでいくようなもので、すぐに崩れてしまう。
  どうすれば自分の考えが社員に上手く伝わるのか。そのためにはどういう組織づくりが良いのかを繰り返し繰り返し考え、試行錯誤を重ねてきました。今でも組織作りについての明確な答えにたどり着いたとは思っていません。寝ても覚めても組織作りについて考えています。
  組織を作り始めてからは幾度も壁にぶち当たってきました。私の場合は社員が30、40人になった時、100人、300人になった時、そして1000人になった時、それぞれの段階で違った難しさが出てきました。しかし、現在のように社員が4万人にもなると、社内に私の代弁者が育ってきてくれます。10年、15年とかけて育ててきた中堅管理職たちが、今度は若手にOJTなどを通して正しい教育をしてくれています。その辺は楽になりました。そういう仕組みができましたから、セコムのカルチャーはこれからも、変わらなく正しく伝わっていくだろうと思います。

(1月31日更新 第4話「育て、育てられ」へつづく)  



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