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Front Interview
第1話 第2話
第3話 第4話
Vol.012 三井法律事務所 弁護士 代表パートナー 三井拓秀第2話 創意工夫の輪
コラム(2) パーソナル・データ(2)
コミュニティと、工夫と
 たとえば、ビジネス上のつきあいでランチを一緒にするというのは、日本企業の人たちもごく普通にやってはいるわけです。しかし夜のプライベートな世界で日本人がもっとつっこんだつきあいをしているかというと、それはしていないのです。夜になると日本人は身内同士の付き合いだけになりがちで、ビジネス関係の人たちと胸襟を開いて付き合うことをしていません。しかし、実はそういう世界に入らないと現地の本当の話というのは聞こえてこないのです。
  だから、たとえば現地でシンジケートを組むような大きな取引の場合にも、現地のハウスがまず声をかけるのは日系企業ではありませんでした。おいしい仕事は、まず友達関係に連絡する。それで売れ残ったところを振ってくるという順序になってしまうのですね。
  当時、1980年代の日本の金融取引というのは、まだ規制が厳しかったので、完全に型にはまったものでしかありませんでした。ただボリュームだけはすごく大きかったですね。日本の株価はどんどん上がっていましたから、株式に関する仕事、たとえば転換社債とかワラント債などを日本の企業が海外で発行する。しかし基本的には同じパターンの商品で、何の工夫もない。ロンドンでそれを引き受けている側は手数料がどんどん貯まっていくわけです。ロンドンには日本人向けのナイトクラブができて、夜そこへ行くと日本の証券会社の人たちが、あちらこちらで景気よく飲んでいる光景をよく見たものです。

東京銀行現地法人勤務
 ロンドンの法律事務所で1年間勤めた後、同じく英国にある東京銀行(現三菱東京UFJ銀行)の現地法人で働くことになりました。取引相手は北欧やイタリア、ハンガリーなどヨーロッパ各国の国や企業です。そういった顧客に日本からのお金を出していくというビジネスに関わりました。
  この東京銀行に勤務したことで、ようやく念願のビジネスの現場に立ち会うことができました。スワップ取引とか貸倒処理のような金融機関のビジネスというもの、六法全書に載っているような法律の言葉ではなく、ビジネスの実践的なターム(用語・述語)というもの、また日本の企業組織について学ぶことができたのです。
  たとえば"金利"という言葉ひとつとっても、当時の私にとっては預金通帳で認識するぐらいでした。しかし実際の銀行の金利計算というのは、ディールを見ながら「これとこれを金利交換します」という具合に計算しているわけです。そうしたことも実地で接することが、後になって大いに役立ちました。
(2月21日更新 第3話「起業弁護士」へつづく)  




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