そこで、三井安田法律事務所を解散して、2004年に三井法律事務所を作りました。仕事はこれまでと同様に企業、金融分野に特化した事務所で、現在15人の弁護士がいます。メンバーは以前に比べるとずいぶんと少なくなりました。しかし、この分野に取り組むには不足がないという意識からスタートを決断しました。
こうした気持ちになったのは、私自身が東京銀行に勤務して弁護士を使う立場、顧客の立場に立った経験が大きく作用していると思います。お客様のほうから弁護士事務所を見ると、"大きな事務所に頼めば安心"という面は確かにあるかもしれません。しかし、これは実際のサービスとはあまり関係ありません。たとえば小さい事務所でも「この人に相談したい」という人がいる事務所のほうがありがたかったりするわけです。結局、相談したい弁護士というのは少数でしかないというのが実態です。
また、人数が100人いる法律事務所でも、全員が一つの取引に取り組むということは実際にはありません。現在、大勢の弁護士が必要になる仕事というとM&Aやその相談業務でしょうが、本当に重要な判断をしているのは1人か2人ですし、人数が必要なのは時間をシェアするためという要素が強いからです。それに、たくさんの弁護士が集まって、みんなで討議すれば正しい回答が出てくるというものでもないですからね。
もう一つ、私自身が独立の際に考えたのは、"チーム全員が見渡せる"ということでした。いくらインターネットのような情報伝達手段が普及しても、最後は人と人との肌のふれあいが感じられる、そうしたものや関係をチームとして大切にしたかったということです。 |