1981年に伊藤忠に入社して、まずは化学品を取り扱う部門に配属されました。ケミカル関連製品を売ったり買ったりするところです。この部門には11年間所属しました。商社の花形といえば営業ですが、新入社員のうちは先輩が決めてきた商売の事務処理が中心です。たとえば船やトラックの手配をしたり、港湾の荷役を手配したり、保険、L/C開設、予算管理といった仕事もしていました。
総合商社では、こうした事務処理の仕事を2年ほどで経験して、そのあとは海外へ出張したり赴任したりして営業に携わるというのが通常のコースです。しかし、私の場合は社内試験に落ち続けるなど、できが悪かったのです。それで同期の連中が次々と海外へ出て行くのに、それを横目で見ながら倉庫管理など事務の仕事を6年間も続けていました。
しかし、その経験も無駄ではなかったと思います。事務の仕事を続けている間に運送会社や船会社の人と仲良くなって、私が電話一本すれば無理を聞いてくれるようになるまでの関係を作ることができました。またこの時には、商品が実際にどんなふうに動いているのかを現場で覚えることもできましたから。
(3月14日更新 第2話「商売に開眼する」へつづく)
|