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Front Interview
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Vol.013 株式会社リヴァンプ 代表パートナー 澤田貴司第2話 商売に開眼する
コラム(2) パーソナル・データ(2)
花形の営業部へ
 営業に配属されたのは伊藤忠に入社してから7年目でした。同期の中では一番遅かったほうだと思います。そして、営業は思っていたより大変な仕事でした。最初は電話をしても断られるばかりでした。
しかし、ねばり強く連絡をとり続けていると話を聞いてくれる企業も出てきます。そのうちに、いくつかの会社と取引ができるようになりました。このような小さな成功が2、3度続くと自信がついてきて、営業も上手くいくようになるものです。
  当時、先輩から引き継いだ欧米のメーカーとの商売では大変つらい経験をしました。そのメーカーが、伊藤忠を通じて販売していた東南アジアや日本のお客様に私が担当して約半年で直接販売すると通告されたのです。つまり見事に伊藤忠は中抜きされてしまったのです。メーカーが直接、お客さんのところに連絡を取って商品を納入してしまうわけです。 
  伊藤忠はまったく関われないし、そのメーカーとの関係も切れてしまう。当時の伊藤忠がお世話になっていたお客様からは「伊藤忠から買いたい」と言ってもらっているのに、売る物が突如なくなってしまったのです。その時は本当に必死に考えました。どこが売れる商品を作っているのか、どうしたらそのメーカーから商品を販売していただけるのかと考えたのです。

数字へのこだわり
 それで商品を取り扱わせてもらおうと営業をかけたメーカーの一つが旭硝子でした。当時、旭硝子は三菱商事と取引をしていたメーカーだったのですが、私が伊藤忠の営業マンとして商売にいったのです。幸い取引が制約しただけでなく、そのビジネスが数年で非常に大きな取り扱いとなりました。旭硝子の製品を北欧や南アフリカに販売したり、中国に売ったりという商売がどんどん大きくなっていきました。最終的にはいろいろな商売を多くの企業と構築することができ、担当を始めた当時の販売ゼロから最終的には数百億円ぐらいの商売になったと思います。
  実は当時の旭硝子には、入社2〜3年目の玉塚元一(現リヴァンプ代表パートナー)さんがいました。今と変わらず、とても良い人物で、彼とのつきあいはそのころから始まりました。旭硝子で成功した後は、武田薬品、三菱化学、三井化学と商売のできる会社も広がっていきました。そのようにして営業成績で結果が出せるようになったいったのです。
  あの頃は、常にライバル商社に負けたくないと考えて仕事をしていました。伊藤忠はいくら頑張っても、三菱商事や三井物産に次ぐ第3の位置から上に行けず、いつも悔しい思いをしていましたから。数字にはこだわりました。自分の売り上げは業界でどの程度とか、シェアは何%かということに、とてもこだわって仕事をしていました。

流通はお客様の評価がすべて

 私が伊藤忠に入社するずっと前の話になりますが、米国にあったセブンイレブンとイトーヨーカ堂の橋渡しをしたのが伊藤忠でした。その後、イトーヨーカ堂の力もあって、日本のセブンイレブンは順調に業績を伸ばしていたのです。ところが1980年代の末ごろには、本家本元、米国のセブンイレブンを経営していたサウスランド社の経営がおかしくなったのです。それでイトーヨーカ堂と伊藤忠で協力して立て直そうという話が出てきたのです。そのときは伊藤忠の社長から直々に「サウスランド買収のチームを作るのでその責任者になってくれませんか」と言われました。伊藤忠に入社して12年目、34歳の時でした。
  イトーヨーカ堂グループと伊藤忠でサウスランド社を数百億円で買収して、イトーヨーカ堂グループが主体となり日本で培ったノウハウでサウスランドを再生したのです。言葉で言うのは簡単ですが、実際は非常に細かい仕事の積み重ねでした。伊藤忠側のチームは私のほかに食品や繊維など各部門から10人ぐらいが集まりました。伊藤忠とイトーヨーカ堂のチームが一緒になってサンドイッチ工場をどうやって作るとか、物流をどうやって効率化していくかとか、そういった具体的な事柄を一つ一つ詰めていきました。私自身流通業というものに関わったのは、この時が初めての経験でした。仕事自体はとても上手くいきましたし、結果的にイトーヨーカ堂グループには本当に多くのことを学ばせていただいたと思っています。
  この仕事がきっかけとなって、その後イトーヨーカ堂が中国に進出したいという話があった時にもお手伝いさせてもらいました。中国進出をお手伝いした時に、イトーヨーカ堂の方が「流通というのはお客様の評価がすべて」とおっしゃったのを今も覚えています。この言葉が私のその後の進路を決めたのかなと思います。





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