私が伊藤忠に入社するずっと前の話になりますが、米国にあったセブンイレブンとイトーヨーカ堂の橋渡しをしたのが伊藤忠でした。その後、イトーヨーカ堂の力もあって、日本のセブンイレブンは順調に業績を伸ばしていたのです。ところが1980年代の末ごろには、本家本元、米国のセブンイレブンを経営していたサウスランド社の経営がおかしくなったのです。それでイトーヨーカ堂と伊藤忠で協力して立て直そうという話が出てきたのです。そのときは伊藤忠の社長から直々に「サウスランド買収のチームを作るのでその責任者になってくれませんか」と言われました。伊藤忠に入社して12年目、34歳の時でした。
イトーヨーカ堂グループと伊藤忠でサウスランド社を数百億円で買収して、イトーヨーカ堂グループが主体となり日本で培ったノウハウでサウスランドを再生したのです。言葉で言うのは簡単ですが、実際は非常に細かい仕事の積み重ねでした。伊藤忠側のチームは私のほかに食品や繊維など各部門から10人ぐらいが集まりました。伊藤忠とイトーヨーカ堂のチームが一緒になってサンドイッチ工場をどうやって作るとか、物流をどうやって効率化していくかとか、そういった具体的な事柄を一つ一つ詰めていきました。私自身流通業というものに関わったのは、この時が初めての経験でした。仕事自体はとても上手くいきましたし、結果的にイトーヨーカ堂グループには本当に多くのことを学ばせていただいたと思っています。
この仕事がきっかけとなって、その後イトーヨーカ堂が中国に進出したいという話があった時にもお手伝いさせてもらいました。中国進出をお手伝いした時に、イトーヨーカ堂の方が「流通というのはお客様の評価がすべて」とおっしゃったのを今も覚えています。この言葉が私のその後の進路を決めたのかなと思います。
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