2003年に設立したキアコンは流通企業に特化した企業再生ファンドでした。仕事の流れは、私が案件を探し出してキアコンに資本を一緒に出資しているパートナーに提案する。投資によって会社が立ち直り、利益が出るようになると、その企業を売却や上場でエグジットするというものです。キアコンには優秀な社員が集まってくれたので、仕事はそこそこ順調でした。日本政策投資銀行と一緒に、在庫商品などの動産を担保にした新しい資金調達のスキームをつくることもできました。
しかし仕事を続けるうちに「この仕事は、ちょっと違う」と思い始めていました。キアコンの資金というのは投資家から提供を受けています。投資家というのは、短期的により大きなリターンを求めてくるものです。それに応えようと努力しているうちに、いつのまにかキアコンでの仕事が私の考えていた企業の再生というより「会社の売買ありき」という当然の姿になっていったのです。
私は長期的な視点で企業の根本的な再生をしたかった。そのために汗を流していくような仕事です。しかしファンドという形で企業再生に関わるかぎり、それはとても難しいことでした。ファンドはものごとをクールに見る仕事なのです。最低このくらいはリターンがあると常に頭の片隅に置いておかなければいけない、そんなところに違和感を持ってしまったのです。 |