ファーストリテイリングにはまずは店長候補ということで入社しました。私が一番不安だったのは流通業の経験がまったくないことでした。朝、掃除をして、開店の時には笑顔でお客様を迎える、そんな経験をしたことがありませんでしたから。それで2カ月ほど店頭にいました。そのときに感じたのは、柳井さんが熱く語っていた経営理念、ビジョンといったものが、現場でほとんど実現していなかったことでした。あれはショックでしたね。
今、店頭ではいったいどのようなことが起こっているのか、何をしなければならないのか、そんな意見を毎日のようにメモに書いて柳井さんにFAXしていました。するとすぐに、本社に呼び戻されて経営企画室長になりました。「おまえが変えてみろ」というわけです。その2カ月後には商品本部長に任命されました。さすがに商品本部長のほうは自信がありませんでした。これは柳井さんが、ずっとやってきた仕事ですし、シャツの善し悪しや、縫い目や仕上がりについて管理をしたり、指示を出していかなければならないわけです。
その2カ月後の株主総会で、いきなり役員。常務になってしまいました。入社半年で、あれよあれよという間に常務になってしまったわけです。その間、私にとっては未経験の仕事でしたし、とにかく周りに追いつこう、この会社を何とかしようと、必死でした。そうすると今度は半年後の1998年には副社長になっていました。
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