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Vol.013 株式会社リヴァンプ 代表パートナー 澤田貴司第3話 やりがいの創出
コラム(3) パーソナル・データ(3)
柳井さんとの出合い
 あと3カ月で39歳になるというときに伊藤忠商事を辞め、転職活動をしていました。当時は転職など一般的ではありませんし、一流企業を辞めたというので「お前はおかしい」と、周りからはずいぶん呆れられました。就職活動をしていて、たまたまなのですが後輩から「柳井さんという凄い社長がいる」という話を聞いたのです。
  それで調べてみるとユニクロを運営しているファーストリテイリングという会社でした。その時すでに内定していた会社があったのですが、興味本位でユニクロを受けてみることにしたのです。面接で柳井さんと話すうちに、その魅力にぐいぐい引き込まれてしまったのです。
  どうしてあんなに柳井さんに惹かれたのかというと、発想とか夢とか、目指すものが私と非常に近かったからです。柳井さんは「セブンイレブンのシステムを見習って業界に革命を起こす」、「理想はデル・コンピュータだ」といったことをまじめに、それも熱く語るわけです。私はそんな柳井さんにはまってしまったのでした。

流通の現場へ

 ファーストリテイリングにはまずは店長候補ということで入社しました。私が一番不安だったのは流通業の経験がまったくないことでした。朝、掃除をして、開店の時には笑顔でお客様を迎える、そんな経験をしたことがありませんでしたから。それで2カ月ほど店頭にいました。そのときに感じたのは、柳井さんが熱く語っていた経営理念、ビジョンといったものが、現場でほとんど実現していなかったことでした。あれはショックでしたね。
  今、店頭ではいったいどのようなことが起こっているのか、何をしなければならないのか、そんな意見を毎日のようにメモに書いて柳井さんにFAXしていました。するとすぐに、本社に呼び戻されて経営企画室長になりました。「おまえが変えてみろ」というわけです。その2カ月後には商品本部長に任命されました。さすがに商品本部長のほうは自信がありませんでした。これは柳井さんが、ずっとやってきた仕事ですし、シャツの善し悪しや、縫い目や仕上がりについて管理をしたり、指示を出していかなければならないわけです。
  その2カ月後の株主総会で、いきなり役員。常務になってしまいました。入社半年で、あれよあれよという間に常務になってしまったわけです。その間、私にとっては未経験の仕事でしたし、とにかく周りに追いつこう、この会社を何とかしようと、必死でした。そうすると今度は半年後の1998年には副社長になっていました。


商品力の発見

 ユニクロの店頭に立っていたときおかしいと思ったのが、社員がユニクロの商品を着ていないことでした。どうして着ないのか聞いてみると「洗濯機にかけると色が落ちる」、「デザインがいまいち」と言うわけです。他のカジュアルブランドの服を着ているのです。それが店にいる人だけじゃないのです。本部の社員も同じでした。私は本気で「自分が着たくない服なんて売れるわけないだろう」と思いました。
  結局、本部が作って店に送る商品というのが、店の人ですら着たい服ではなかったということです。根本的な問題は商品にあったのです。私は商品に力がつけば、店員は自社製品を着るようになるし、自信を持って売るだろう、それで店舗も活性化できると考えました。
  商品本部長になったときには、社員には強制的に自社商品を着用させました。あまり強制というのは好きではないのですが、とにかく「自分の会社の商品を理解しよう」という思いからでした。この結果、社員からは商品についていろいろな意見が上がるようになってきました。「ここが悪い」、「ここをこんな風にしよう」といった意見です。社員が前向きになって具体的な反応が返ってきたことは嬉しかったですね。





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