グラムコは私一人だけでのスタートでした。当初は実績もありませんし、営業しようにもグラムコの存在すら知っていただく方法がありませんでした。大枚をはたいて日本経済新聞に広告を出したこともありますが、仕事には結びつきませんでした。そんなとき、椎野さんが創業していたベスタクスが第1号のお客様になっていただいたのです。
ようやく実績ができはじめたという頃にオフィスを麹町に移しました。麹町は先進的な企業が多く集まる所ですから、ここに居を構えたほうがいい仕事に巡り会えるだろうと考えたのです。社員も10人以上に増えており、会社の発展に責任を感じるようになっていました。そのような思いとは裏腹に、麹町への移転は結果的に失敗でした。会社は倒産するかどうかという瀬戸際まで追い込まれてしまったのです。もし一歩間違えるとホームレスになるかもしれない、そんな危機感も持ちました。
会社がどん底の状態になり、逃げるようにオフィスを岩本町に移しました。会社の経営は苦しかったのですが、やめる事はまったく考えていませんでした。そもそも、やめたとしても帰る場所がありませんから。そして、近辺にあった凸版印刷や広告代理店などと取引が生まれ、一緒に組んで仕事をする機会に恵まれたのです。 |