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Front Interview
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Vol.018 グラムコ株式会社 代表取締役社長 山田敦郎第3話 我、表現者なり
コラム(3) パーソナル・データ(3)
100の会社、100の企業文化
 ブランディングとは、何かのテンプレートがあってその通りやれば良いというものではありません。100社あれば100の企業文化があり、それぞれ違ったアプローチや発想が必要となります。また私は創業時から「オリジナル」にこだわっています。ともするとグラムコの仕事はデザインだけが注目されがちですが、デザインはブランドのひとつの側面であって、そこに行きつくまでに徹底的なリサーチを行い、市場環境、顧客環境、競合環境などを総合的に分析していきます。さらにヒヤリングや取材を通して企業トップのビジョンを余すところなく把握し、それを実現していくためのコンセプトを考えます。
  ブランディングのための重要な要素として会社のパーソナリティや、そこから導き出される企業理念があります。それを言葉に置き換えたものがネーミング、目に見える形にしたものがデザインとなります。また、その延長として、店舗やオフィスのスペースブランディングなども私たちの仕事の領域になります。グラムコではそうした仕事をトータルで行っています。そうした意味からグラムコの仕事は複合ビジネスと言えると思います。
  最近は「仮説思考」が流行のようですが、安易な仮説思考は安直な「思い込み」につながる恐れがあります。グラムコは予断や予見を持たず徹底的に「調べる」「洗い出す」を基本にしています。そうすることで企業の本質がくっきりと見えてくる事があります。これをベースにしてお客様と徹底的に話し合うのです。

気合と根性と科学的実証と

 ある住宅メーカーから「東海道新幹線の沿線に100枚の野立て看板を立ててブランドイメージを高めたい。企画を考えて欲しい」という依頼がありました。競合相手はそのメーカー関連の広告代理店でしたが、私は「必ず仕事を獲る」と意気込んで臨みました。最初に私たちがしたことは、実際に新幹線に乗り込んで沿線にどのような野立て看板があるのかを自分たちの目で見てみることでした。さらには、新幹線乗客がいつ、どのようなときに看板を見ているのかも調べました。
  調査の結果わかったことは、一流と呼ばれる企業はほとんど野立て看板を出していないということでした。また、のんびり窓の外を見ている乗客もほとんど居らず、唯一窓外に目をやるのは車両が駅に停まっているときだけ、ということが分かりました。そこで、「品質を重視する住宅メーカーに野立て看板は合わない」、むしろ「ブランド価値を毀損する」ものであるとし、仮に交通広告を出稿するのであれば「主要駅のプラットフォームに企業価値を高めるブランド広告を打つべきだ」という提案をしたのです。プレゼンを受けた住宅メーカーの担当者は、「それでは駅に出す広告看板の提案を2社から出していただきましょう」ということになったのです。つまりプレゼンに勝った競合相手とふたたびコンペということになったわけです
  さすがに、そこまでいくと諦めると思っていたのでしょう。しかし、「よし、それなら駅頭広告の最適解を提案しよう」と決意し、主要駅において出稿を見込める広告スペース周辺での、人の歩く速さ、そのスピードで見える視認性などについて科学的な検証を行い、どこに、どのような看板を出せば人の目により長く、より効果的にふれられているのかを明らかにしました。その検証結果をベースにしたクリエイティブ案を提案したのです。そして、とうとう仕事を獲得する事ができました。




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