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Vol.018 グラムコ株式会社 代表取締役社長 山田敦郎第3話 我、表現者なり
コラム(3) パーソナル・データ(3)
そのヒゲの男、クビ
 ブランド構築のプロジェクトには、実に様々なドラマが生まれます。フランス料理のように、メニュー通り順番に出していれば話が通っていく世界ではありません。本格的に着手するまで、半年間延々と議論を続けるなどはざらにあることですから。
  ある総合商社同士が合併するにあたって、ブランディングをグラムコが担当させていただくことになりました。じつは社名については、両社が組織した統合委員会の時点で、すでに横文字の名前が決まっていたのです。しかし、社名検討会議での、当時経営のトップにおられた会長の「『四書五経』に出ているような和名が良い」という一言で見直しすることになったのです。私はその場で「統合委員会での合意事項だし、時代の趨勢だから」と発言したばかりに、すぐに「そのヒゲの男はクビ」と退場させられてしましました。
  社名の再検討については、国文学者の方に参加いただいたり、画数で考えたり、種々、知恵をひねったのですが、難解で覚えられそうもない案ばかりで良い案は出てきませんでした。刻々と会長に報告する期日は迫ってきます。そこで私は、両社の社名に共通する文字をアレンジした覚えやすい案を考え、提案する事にしたのです。結局、会長にこの名前を気に入っていただき、「いい名前をありがとう」とお褒めの言葉をいただきました。もちろんその日から私はプロジェクトに復権することができました。

経営マインドのプレゼンター

 今や中古車販売の業界では大手となられましたガリバーさんが、まだあまり知られていない20名位の組織だった頃、一緒になってブランド構築のお手伝いをしました。また最近では果物店の老舗、千疋屋総本店さんのブランド導入をお手伝いしています。私自身が会社を創業したり、経営で苦しい時期があったりなどの苦労をしましたから、ベンチャーや老舗の経営者が苦労しているのを見ると、「よし、一肌脱ごう」という気持ちになるのです。
  コピーライティングやデザイン分野は社会的にはとても弱い存在とされていますが、私はコピーライターやクリエイターの社会的地位を上げていきたい、お客様とイコールパートナーにまで高めたいと考えています。私なら企業の経営者とクリエイティブを融合させる役割が果たせると思っているからです。
  なぜなら、私はブランドコンサルタントであると同時に、今も「自分は表現者である」と思っているからです。そして、表現者であるとともに代弁者でもあるのです。つまり企業の代弁者です。経営者の方々は皆さんご自身のことをうまく表現されることが得手ではありませんから、そこを私が代わりになって表現して差し上げる。そこに自分のポジションを見ているからです。

(8月22日更新 第4話「生生流転」へつづく) 




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