絵や映画が好きで一生懸命に見ていた時代には、つまり受け手の時代にはお金のことなどまったく頭にはありませんでした。西村画廊にいた頃も、アートのお金のことでは作品の定価という認識しかありませんでした。白石コンテンポラリーアートでもやはり甘かったと思います。しかし、自分でギャラリーを経営するようになってから、つまり送り手側になってからは意識がまったく変わりました。お金のことはしっかりと考えないとやっていけません。また、アートだけではなく、世間の動向やブームに無関心ではいられません。さらには、作品の量を確保する必要も痛感しました。
ベンチャービジネスの経営者の方は世の中の流れをじっくりと観察して、新しいものを見つけると「これなら行ける」と起業されるのだと思います。私も同じように、現状アートの世界で起こっているムーブメントをじっくりと観察し、その中からどうやって利益を得ていくことができるかを考えています。あまり適切な表現ではありませんが、私は小山登美夫ギャラリーを総合商社のような多角的なものにしていきたいと思っています。私がアートマーケットに働きかけることでその需要を大きくし、さらにビジネスとして発展していくようになっていけばいいと考えています。
そのためにも経営者として、アーティストや顧客のフォローをしつつ、会社全体のマネジメントを確立したり、スタッフと顧客のリレーションシップをきちんと取れる環境を整えていくことも私の仕事です。また、細かい事務など私自身が不得手な仕事もちゃんとできるスタッフを育てなければいけないと思っています。組織やお金の話ばかりになってしまいましたが、やはり、ギャラリー経営の根源にはアートがありますから、「いくら儲けるか」だけではなく、「作家をどうやって世間に知らしめていくか」「作品を正当な評価ができる人の手に送り届けたい」ということは常に考えていますし、これは会社がどんなに大きくなっても変わらないことです。
(9月26日更新 第4話「産業としてのアート」へつづく)
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