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Front Interview
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第3話 第4話
Vol.019 小山登美夫ギャラリー オーナー 小山登美夫第4話 産業としてのアート
コラム(4) パーソナル・データ(4)
日本の文化を守る
 しかし、これを具体化するのはとても難しいことです。村上隆さんは『芸術起業論』で「日本の芸術の道は厳しい」と言ってます。独立してから国内よりも海外を指向してきた私の次の課題が、実は国内のマーケットを確立することだというのは皮肉なことです。事実、村上さん、奈良さんの重要な作品の多くは海外に行ってます。日本のほとんどの美術館に入っていない状況で、彼らの作品は、オークションで億を超えてしまったのです。
  これと関連して、もう一つの自分の課題だと思っているのが海外に流出している日本の美術品を日本に取り戻すことです。かつてバブル崩壊のとき、企業が所有していた美術品は、税金が払えないという理由で手放さざるをえなくなり、国も美術品を保護しようとしなかったので、そうした美術品のほとんどが海外に流出してしまったのが実情です。
  美術品だけではありません。相続税の支払いで、土地を物納する場合には更地にしなければいけないルールがあります。そのため貴重な建築物がどんどん消えているのです。これでは日本という国が、日本の貴重な文化財産をみずから破壊してしまっているに等しいものです。私は日本が生みだした文化を日本人が守り、アーカイブし、歴史を作り、自分たちの文化を取り戻すための仕事ができればと思っています。


TKG Daikanyama

 こんど(2007年9月)、代官山にあったヒルサイドギャラリーの場所に、新しいギャラリースペースをオープンすることになりました。ガラス張りの小さな15坪のギャラリーです。建築家の西沢立衛さんに内装をお願いしていますから、きっと良い空間ができると思います。代官山という場所に決めたのは、あるお客様から「どこか近くにギャラリーを作ってほしい」といった声があったからです。現在のギャラリー(江東区)は、東京の東部にあり地理的には多くの方に気軽に来ていただけるロケーションではありませんから。
  そこで北川フラムさん(アートフロントギャラリー代表取締役)に相談したところ、「ここを使えよ」とご自分が使っていたそのスペースを譲ってくださったのです。良いチャンスだと思い、すぐに進出を決断しました。
  通常、ギャラリーで開く展覧会は基本的に個展ですから、来ていただいてもお客様には1人の作家の作品しかご覧いただけません。しかし、今回のギャラリーは、もう少し気軽な中で複数の作家が見られるようにしようと思ってます。いわばビューングルームにしたいと考えています。そこでアーティストの実作品に触れてもらい、もっとリアルなアートに対する経験を持ってほしいのです。



次号(2007年10月3日発行)は、日本アイ・ビー・エム株式会社 IBM Venture Capital Group 日本担当 ベンチャー・ディベロップメント・エグゼクティブの勝屋 久さんが登場いたします。




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