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Vol.022 財団法人ベンチャーエンタープライズセンター理事長 濱田隆道第3話 礎と俯瞰
コラム(3) パーソナル・データ(3)
予算と戦略
 NEDO(独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)で総務部長として、技術開発予算の配分に携わったのが1999年から2001年。予算を適切に配れば産業の発展につながるという、この仕事で学んだ経験から、ベンチャー振興に技術開発予算を連携させ、ビジネスにつなげていく戦略的な仕組みが必要だと思い始めました。
 また、同時に、ビジネスにつながるかどうかを検証する仕組みを作っていかないと、研究のための研究になってしまいます。米国には、「SBIR制度(Small Business Innovation Research)」という、各省庁の予算のうち一定の金額を研究開発のための助成金として提供する、ベンチャー企業を応援する制度があります。NIH(National Institute of Health/保険省)傘下の研究機関が出している予算などは年間3兆円もあり、その相当部分が、バイオベンチャーに廻っています。日本全体の研究開発予算にほぼ匹敵する額です。
 日本版SBIR制度もあることはありますが、形だけで戦略がない。少なくともベンチャー企業に対してお金を徹底してつけていく工夫や仕組みではありません。ベンチャーを育成していくには、戦略的な仕組みが必要だろうと考えています。

産業としてのベンチャーキャピタル
 2006年にVECの理事長に着任してからは、ベンチャーキャピタル業界と連携しながら、業界がベンチャー企業に円滑に資金提供できるように応援しています。ベンチャーキャピタル業界も年間4,000億円以上のエクイティファイナンスができるようになって、一つの立派な産業に成長したわけですが、課題も多い。それを一緒に解決していきたいと思います。
 たとえば金融庁のルールが厳しければ、経済産業省と組んで過剰な規制を指摘するというような細かなところから、税制が海外の資本を取り入れにくいシステムならば、資金調達の枷になっているハードルを取り除くというように、多方向から議論を進めて世論を喚起していければと考えています。それにあわせて、個別の企業のデータを共有化するためのインフラを整えていきます。共有のデータがないことで、過当競争が起こったり、投資効率が上がっていなかったり、というのは強い問題意識として持っています。
 ベンチャーキャピタル業界がJVCA(日本ベンチャーキャピタル協会)を核にして、共通のインフラを構築し、課題解決に向けてコミュニケーションを円滑にしながら、投資効率を上げていく、そういうことに役立てればいいなと思っています。まずは仕組みの構築。共通のデータベースがないと、産業として成り立っていかないですからね。

投資先4,000社
 我々の調査では、我が国でベンチャーキャピタルが投資している企業が約4,000社あることがわかっているのですが、誰がどの企業にどの程度投資しているのか、という情報が共有化されていないことで、全体を把握できる人がいない状況です。
 たとえば、そのうちIT産業は600社ほどありますが、みんなが同じような業態の会社に投資をしていて、その結果、お互いがライバルになって伸び切れなくなっています。つまり全体が見えないことでの弊害が大きく出ています。
 横の連携を強化するだけで、今の閉塞状況から抜け出せるIT企業もあると思います。ですから、共通のインフラを構築し、みんなで話し合えるフレームワークをつくっていきたい。それがVECに来てから最も努力していることです。



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