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VC vision
前編 後編
第23回 ベンチャーとともに、ベンチャーを歩む。 前編  リスクキャピタルの担い手として
株式会社TNPオンザロードは、
神奈川県を拠点にベンチャービジネスの支援事業を展開する
TSUNAMIネットワークパートナーズのベンチャーキャピタル部門を
独立させて設立したベンチャーキャピタル。
前編では、ベンチャー支援のプラットフォームの確立に力を注いできた
TSUNAMIネットワークパートナーズの問題意識と、
そこからベンチャーキャピタル事業に特化した
TNPオンザロードが設立された経緯とその理念についてうかがった。

interviewer:森本紀行(ベンチャー座アドバイザー、HCアセットマネジメント代表取締役社長)
メンバー一覧主な投資先事例
日本にベンチャー支援のプラットフォームを

【森本】 まずは、TNPオンザロード設立の経緯からお聞かせください。
【山下】 TNPオンザロードは、2005年に設立されたベンチャーキャピタルです。その母体となるTSUNAMIネットワークパートナーズは2000年に設立されています。当時、野村證券横浜支店の企業サービス課のヘッドをしていた新堀洋二は、日本にシリコンバレーのようなベンチャー支援のオープン・プラットフォームを作りたいという問題意識を持っていました。そこで、横浜キャピタルにいて後にTSUNAMIネットワークパートナーズの取締役になる岸透と監査法人トーマツの田村先生と一緒に、神奈川県庁に出向いて神奈川県に民間主導による地域のベンチャー企業を対象にしたベンチャー支援の仕組みを作る提案をしたのです。神奈川県庁にはシリコンバレーに駐在した経験者が一人いまして、その方が積極的に動いてくれたこともあって、2000年8月に、任意組織としてのベンチャー支援組織「TSUNAMI」ができました。「TSUNAMI」には、テクノロジー(T)、サイエンス(S)、ユニバース(U)、ナビゲーター(N)、アソシエーション(A)、みなと(M)、イノベーション(I)の頭文字を当てて、「テクノロジーとサイエンスの領域から、水先案内人になって、皆と一緒に、みなと神奈川からイノベーションを起こそう」という意味が込められています。そして、この組織を企画・運営する会社としてTSUNAMIネットワークパートナーズが設立されたのです。代表にはワタミでIPOを成功させた呉雅俊が社長として就任し、同じく代表に新堀が副社長として就任しています。私は野村證券の名古屋駅前支店時代だった1990年以来、新堀とはずっといろいろな問題意識を共有してきた関係で、これに参画することになったという次第です。
【森本】 そのときは、まだベンチャーキャピタルとしての展開はなかったのですか。
【山下】 はい。TSUNAMIネットワークパートナーズでは、設立と同時に143億円の資金を集めてファンドを作りました。しかし、これは、ベンチャーキャピタルファンドと呼べるものではありませんでした。なぜかというと、1998年に有限責任組合法ができましたが、当時は、資本投資しかできない状況だったのです。そこで、出資者の方々のご理解をいただいて、民法上の組合での展開を進めていきました。仕組みとしても融資ができるようにして、ファンドとして出たリターンは再投資をしてもいいという形になっていて、基本的にベンチャーキャピタルではありえないスキームになっています。ですから、この143億円は、それまでの金融機関やベンチャーキャピタルでは対応できないところに、チャレンジするお金として付託していただいた資金といっていいと思います。お陰さまで、このファンドを通じてあらゆるハンズオンのノウハウの蓄積ができました。多分、最後のリターンはかなりのものになると思います。こうした経緯を経て、2005年にTSUNAMIネットワークパートナーズのベンチャーキャピタル部門を独立させる形でTNPオンザロードの設立へと至っています。

エンジェルマネーからリスクマネーへ

【森本】 「オンザロード」というのは、とてもユニークな名前ですが、どういう理由で社名を付けたのですか。
【山下】 「オンザロード」の名前の由来は、二つあります。一つは、ミュージシャンが、演出家、舞台関係者などと皆で、同じバスに乗ってコンサートツアーを巡業するときのことを、「オンザロード」と言います。「ベンチャーの人たちと一緒に同じバスに乗って夢に向かって進みましょう」という思いを込めています。
もう一つは、浜田省吾の歌「オンザロード」の歌詞に、「この道の彼方、約束されたはずの場所があると、だから、信じて行きなよ、もう一度、孤独に火をつけて」といった内容の歌詞があります。これは、まさに、ベンチャー起業家に捧げるにふさわしい激励の言葉と受け止めることができます。社長とは孤独な決断をしなければならない存在です。しかし、その決断の先には、約束された場所があるのだ、それを信じて孤独に火をつけてみんなでがんばりましょうというメッセージを社名に込めています。ちなみに、TSUNAMIも、実はサザンオールスターズの同名の曲が名前の由来の一つになっています。
【森本】 ベンチャーキャピタルとは異なるビジネスモデルでスタートしたTSUNAMIネットワークパートナーズがベンチャーキャピタル事業を本格化させるようになったきっかけは何ですか。
【山下】 2005年に有限責任組合法が新たに改定されたことと、その前年に商法、会社法が大幅に改正されたことがあります。ベンチャーキャピタルがよりアクティブに動くことが可能になったと同時に当社自体もこれまでの個人投資家に依拠してきた体制から機関投資家や外国人投資家、事業会社からの運用のお金を預けていただく仕組みが必要になってきました。TSUNAMIネットワークパートナーズの総勢25人のうち20人が、TNPオンザロードに移って、ベンチャーキャピタルとして活動しています。
【森本】 TSUNAMIネットワークパートナーズとベンチャーキャピタルとしてスタートしたTNPオンザロードの違いはどこにありますか。
【山下】 簡単に言いますと、TSUNAMIネットワークパートナーズは企画・運営会社です。TNPオンザロードはベンチャーキャピタルです。それを具体的に表したしたものがTNPオンザロードのロゴです。「TNP」の頭文字に三つの楕円形の輪が組み合わさっているのですが、この輪の一つは、ベンチャー支援機構のTSUNAMIです。これはヒト、モノ、情報、資金が集まるオープンプラットフォームです。もう一つは、ネットワーク事業を表します。三つ目が、バリュークリエイトとしてのベンチャーキャピタル事業です。この三つの輪は、実は、綺麗な形では組み合わさっていないのですが、それは、この三つが不規則な絡み合いをしているからこそ、無から有を生む世界が作れるのだ、ということを意味しています。オンザロードはそのベンチャーキャピタル事業を担っています。
【森本】 TSUNAMIネットワークパートナーズができてからTNPオンザロードを設立するまでの間にどのような変化がありましたか。
【山下】 TSUNAMIネットワークパートナーズが設立されてからの5年間は、ベンチャーへ投資する中、我々がありとあらゆるハンズオンを経験した期間でした。さらに言うならば、失敗も経験した期間です。でも、この失敗のおかげで、我々はハンズオンをどのように行うべきか、リスクをどうマネジメントすべきかを、身をもって体験できました。そういう意味では本当の失敗とは思っていません。正しい答えを導き出すための試行錯誤だったと思っています。その結果として経験とノウハウの蓄積ができた5年間だったといえます。そこで、いよいよ、この蓄積を武器に、永続的にリスクマネーが入ってくる窓口になっていこうと考えたのです。そのためには、ベンチャーキャピタルとしての体裁を整えなくてはいけないですから、TNPオンザロードの立ち上げへと進展していったわけです。そして、TNPオンザロードでは、機関投資家、事業法人に出資を募ったファンドを立ち上げました。この1号ファンドは、71億8,000万円のファンドで、金融機関、事業会社からの出資が中心です。本格的にリターンを追求するファンドとして運営しています。




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