【森本】 具体的な動きは出てきているのですか。
【山下】 いま、TSUNAMIネットワークパートナーズを中心にですが、2006年に、横浜国立大学と「よこはま高度実装技術コンソーシアム(YJC)」という新しい産学連携のスキームを確立しました。大企業の中でマーケットのあるテクノロジーの課題を大企業のOBの方々から出してもらって、横浜国立大学を中心にして神奈川県下にある大学で研究してもらい、ある程度インキュベートされた段階で事業性の可能性が見えればベンチャー企業に移行して事業化していくシステムです。そうするとリスクマネーも入れられるし、資本政策で関わった人達に成功を按分する仕組みができます。すでに2年目に入って「OBの会」を中心に実質的な活動が拡大してきています。それから、CEO、CFOの人材ストックが大変重要になってきています。これも、横浜国立大学経営学部との連携で、CEO講座を開設して人材育成を図るプロジェクトをスタートさせています。米国のビジネススクールにはMBAという経営者資格コースがありますが、米国の経済合理性の中で組み立てられた考え方がそのまま日本で通用するのだろうか、という問題意識があります。
【森本】 なるほど。
【山下】 だから、日本の土壌にあった経営のあり方を、特にテクノロジー系の開発型ベンチャーにフォーカスしたCEO、CFOを育てなければならないと考えています。この講座は、我々の7年間のデータベースをもとに、横浜国立大学経営学部の先生に分析してもらったものを体系化する予定で準備を進めています。また、IMBNベンチャーといって、韓国のソウル大学のイム先生と共同でベンチャーキャピタルを設立いたしました。中国・韓国・台湾だけでなくアジア全域にいるサイエンティストの方々のネットワークを網羅していて、テクノロジーも含めてヒト・モノ・情報が集まる仕組みになっています。
【森本】 日本では創薬ベンチャーが育ちにくい土壌にありますが。
【山下】 はい。厚生労働省、大手製薬会社による縦の構造ができあがっていて、ベンチャーが育ちにくい環境にあります。たとえば、日本の創薬ベンチャーが前臨床を終えて、臨床試験に臨もうと思っても、GMP基準の薬を作るのに大手企業はなかなかベンチャーと一緒にワークしてくれません。それをアジア諸国で臨床試験に臨めるようなプラットフォームを作ろうという計画を進めています。ソウル大学のイム先生には、A−IMBNというアジアの分子生物学のネットワークもありますから、そことの連携もやっています。もう一つは、証券会社との連携があります。ここでは、エース証券と一緒に新しいベンチャー投資・育成の仕組みづくりを考えていこうとしています。こうした一つ一つのプランが、投資家へのリターンの極大化と開発型ベンチャー育成を実現させていくのに必要なプラットフォーム作りにつながっています。これらを展開しながら、さらに必要なアクションを続けていくことになります。TNPオンザロードは、そうした事業をTSUNAMIネットワークパートナーズと共同歩調をとりながら、進めていきます。
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