【森本】 まずは、ルネッサンス・エナジー・インベストメントの設立の経緯からお聞かせください。
【一本松】 私は、大学院を出て、25年間大阪ガスに勤めていました。キャリアのほとんどは研究開発の部門ですごしています。そして、ちょうど50歳になる前に、研究所長のポスト就任の話がありました。しかし、研究所長の仕事を見ていると、50%が管理業務で、40%が儀礼的な業務で占められるのですね。こういうことをこれからずっとやるのかと考えると、それは自分のやりたいことではないと思ったのです。そこで、自分の才覚で何か有意義なことをやりたいと考えて、大阪ガスを辞め、このルネッサンス・エナジー・インベストメントを始めました。2004年8月のことになります。
【森本】 社名にはどうして「エナジー」がついているのですか。
【一本松】 最初はエネルギー関係の分野でやりたいと思っていたのです。エネルギー分野にもいろいろ技術があるし、ユニークなアイデアもたくさんあります。しかし、原油価格がイラク戦争以降乱高下を繰り返し、これだけ価格が不安定だと、私の資本力ではとてもリスクが取れませんでした。したがって、エネルギー関係のプロジェクトはほとんどタッチできていないのですが、一度決めた社名は簡単に変えられないため、そのままになっています。
【森本】 「ルネッサンス」の意味づけは。
【一本松】 「ルネッサンス」は、変革を起こそうという意気込みでつけたものです。
【森本】 ルネッサンス・エナジー・インベストメントは、一般的なベンチャーキャピタルとは、ちょっと違う投資活動を展開していると思います。具体的にどのような活動をされているかお話し願えますか。
【一本松】 我々は、まずインキュベーターとしての展開から始めます。ですから、ベンチャー投資としては、最も上流のポジションにいるといっていいと思います。独創技術に特化して事業化を進めるビジネスです。分野としては、私自身が精通している新素材、新材料にフォーカスした新技術の掘り起こしを行っています。
【森本】 資金を集めてファンドを組成してから投資先を探すという従来のベンチャーキャピタルのスタイルではありませんね。
【一本松】 はい。インキュベーションのところは我々自身で投資をして、その技術がある程度形になって事業化できる段階になったところで、プロジェクトごとに投資家から資金を集めていくやり方をしています。取り組むプロジェクトは、すべて私がCEOになって、経営責任者として実行しています。ですから、それほどたくさんのプロジェクトを同時に立ち上げることはできませんが、一つ一つはかなり大きなプロジェクトといっていいと思います。対象は、大学での研究を基にしたものが主です。優れた材料技術や可能性のある技術を見つけてきて、それにビジネスプランを構想して、投資家が判断できる製品化の前段階くらいにまで事業化のプロジェクトを進めていきます。そこまできたら資金を集めて、起業させていきます。
【森本】 ファンドを組成するわけではないのですね。
【一本松】 はい。プロジェクトごとに特別目的会社を作って、投資家たちには、普通株の株主になっていただく形です。
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