【森本】 現在、投資家からの出資金はどの程度集まっているのですか。
【一本松】 主なところで医療用材料のプロジェクトに6億円、紫外線LEDのプロジェクトに約30億円の出資を受けています。総額でだいたい40億円から50億くらいですね。
【森本】 かなり大きなプロジェクトになりますね。
【一本松】 自分自身でCEOをしている仕事はそれくらいの規模です。
【森本】 外部資本から30億円を調達した案件がありますが、経営者の持ち株比率が低くなってしまいませんか。
【一本松】 いまは、技術開発者と経営者の株の所有は30%くらいです。基本的には、材料技術は、キーになる技術とマネジメントが本当の付加価値になります。ビジネスモデルだけで勝負しているわけではないので、外部資本に株数を持たれていても、別に、経営の主導権が揺らぐことはありません。また、私自身としては、EXITの話にこだわるのですが、ある程度以上に大きくなった企業を経営し続けたいとは考えていないのです。技術開発の最初のところのリスクの大きいところが、自分自身の一番力が発揮できる部分だと思っているので、かなり成功してきたものを日常的に運営していくことは、あまり得意だとも思わないし、こだわりも持っていないのです。ひとり立ちできるところまで来てそれ以上の飛躍が無くなってくれば、事業売却などをして、その段階でふさわしい経営者に事業を譲ればいいと思っています。
【森本】 なるほど。
【一本松】 ですから、議決権を必ずしも持っていないといけないと考えてはいません。逆に、議決権を持っておかないと経営を維持できないのなら、最初から事業化は進めません。
【森本】 一つのプロジェクトに対して投資家から集める30億円という金額は、どのように算出されているのですか。
【一本松】 それは、そのプロジェクトで勝つための金額です。開発段階ごとに資金を少しずつ集めていくのでは、技術開発の事業化は機能しないのです。もちろん、そのような資金もあってもいいのでしょうが。投資家には、ある程度インキュベーションした段階の技術の実物を見て検討してもらうことになりますので、想定しているEXITまで見通した十分な資金をほぼ一気に集めることを行っています。一度に資金が集まらないようなレベルの案件なら、やらないほうがいいです。
【森本】 投資家から資金を集めるときはどのようになさっているのですか。
【一本松】 個別に説明をします。勿論金額の大きい話になりますから、公認会計士の捺印のある書類や法律事務所の作った契約書を用意します。準備にもそれなりに費用が必要になるので、逆にいうと、あまり小さい資金は集められないということになります。
【森本】 出資者にはベンチャーキャピタルは多いのですか。
【一本松】 少ないですね。私のスタイルは、どちらかというと、オーナー経営者には受けるけれども、サラリーマンの金融マンには受けがよくないのかもしれません。
【森本】 新技術を事業化する際に、普通の株式会社にしないのは理由があるのですか。
【一本松】 特別目的会社といっていますが、形態は普通の株式会社と同じです。
【森本】 今、新しい特別目的会社の設立に向けている案件はありますか。
【一本松】 タネはあります。あまり焦ってもしょうがないので、どのタイミングでやろうかと見計らっているところです。
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