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VC vision
前編 後編
第27回 ベンチャーの世界に革命を 後編 勝てる技術の目利き
株式会社ルネッサンス・エナジー・インベストメントの一番の特徴は、
材料分野の新技術に特化した新事業開発で、
どこにも例のないまったく新しいビジネスの創出を目指しているところだ。
後編では、発掘した新技術を事業化するまでに取り組まれる、
同社ならではのインキュベーションの手法に焦点を当てて話をうかがう。

interviewer:森本紀行(ベンチャー座アドバイザー、HCアセットマネジメント代表取締役社長)
グループ主要メンバー主な投資先事例
リスクの大きいところが一番力が発揮できる

【森本】 現在、投資家からの出資金はどの程度集まっているのですか。
【一本松】 主なところで医療用材料のプロジェクトに6億円、紫外線LEDのプロジェクトに約30億円の出資を受けています。総額でだいたい40億円から50億くらいですね。
【森本】 かなり大きなプロジェクトになりますね。
【一本松】 自分自身でCEOをしている仕事はそれくらいの規模です。
【森本】 外部資本から30億円を調達した案件がありますが、経営者の持ち株比率が低くなってしまいませんか。
【一本松】 いまは、技術開発者と経営者の株の所有は30%くらいです。基本的には、材料技術は、キーになる技術とマネジメントが本当の付加価値になります。ビジネスモデルだけで勝負しているわけではないので、外部資本に株数を持たれていても、別に、経営の主導権が揺らぐことはありません。また、私自身としては、EXITの話にこだわるのですが、ある程度以上に大きくなった企業を経営し続けたいとは考えていないのです。技術開発の最初のところのリスクの大きいところが、自分自身の一番力が発揮できる部分だと思っているので、かなり成功してきたものを日常的に運営していくことは、あまり得意だとも思わないし、こだわりも持っていないのです。ひとり立ちできるところまで来てそれ以上の飛躍が無くなってくれば、事業売却などをして、その段階でふさわしい経営者に事業を譲ればいいと思っています。
【森本】 なるほど。
【一本松】 ですから、議決権を必ずしも持っていないといけないと考えてはいません。逆に、議決権を持っておかないと経営を維持できないのなら、最初から事業化は進めません。
【森本】 一つのプロジェクトに対して投資家から集める30億円という金額は、どのように算出されているのですか。
【一本松】 それは、そのプロジェクトで勝つための金額です。開発段階ごとに資金を少しずつ集めていくのでは、技術開発の事業化は機能しないのです。もちろん、そのような資金もあってもいいのでしょうが。投資家には、ある程度インキュベーションした段階の技術の実物を見て検討してもらうことになりますので、想定しているEXITまで見通した十分な資金をほぼ一気に集めることを行っています。一度に資金が集まらないようなレベルの案件なら、やらないほうがいいです。
【森本】 投資家から資金を集めるときはどのようになさっているのですか。
【一本松】 個別に説明をします。勿論金額の大きい話になりますから、公認会計士の捺印のある書類や法律事務所の作った契約書を用意します。準備にもそれなりに費用が必要になるので、逆にいうと、あまり小さい資金は集められないということになります。
【森本】 出資者にはベンチャーキャピタルは多いのですか。
【一本松】 少ないですね。私のスタイルは、どちらかというと、オーナー経営者には受けるけれども、サラリーマンの金融マンには受けがよくないのかもしれません。
【森本】 新技術を事業化する際に、普通の株式会社にしないのは理由があるのですか。
【一本松】 特別目的会社といっていますが、形態は普通の株式会社と同じです。
【森本】 今、新しい特別目的会社の設立に向けている案件はありますか。
【一本松】 タネはあります。あまり焦ってもしょうがないので、どのタイミングでやろうかと見計らっているところです。

技術以外のことは我々が面倒をみるという考え方

【森本】 EXITのシナリオはどのようなものが多いのでしょう。
【一本松】 事業会社への事業の譲渡ですね。これが一番簡単な出口だと思います。事業会社が、M&Aで完全な子会社にしてしまう方法も一つの選択肢ですね。
【森本】 EXITまではどれくらいの期間で進めるのですか。
【一本松】 もともと技術を持っていますから、特別目的会社を作ってからは3年から5年というベースでEXITを進めます。しかし、元の技術には20年なり何なりの蓄積があってのことです。ゼロからはじめての話ではありません。我々がやっているのは、そこにある独創技術を実際の商品にするための技術開発や、その商品をどこに売るかというマーケットの組成です。ただ、ベンチャーでやるわけですから、あまり大手が参入してこない分野でないといけませんから、ニッチマーケットを狙っています。
【森本】 ベンチャーとしての事業化ですね。
【一本松】 ええ、投資家は、そういうことをわかって投資してくれているわけです。ですから、最低限こういうシナリオがある、ということを示す必要があります。その先にこういう夢もあるのということが語れればいいわけです。最初から新聞記事に載るような大きな話は狙いません。
【森本】 インキュベーション段階と技術の商品化、事業化段階では、関わり方が変わってきますね。
【一本松】 技術のインキュベーションと商品化段階でのマネジメントの仕方は、当然変わってきます。インキュベーションでも、各プロジェクトによって変わってきます。報酬を払って大学の先生にお願いすることもあるし、人を雇ってやることもあります。また、先生の研究のために公的資金を調達してくるということもやります。
【森本】 インキュベーションをファイナンスだけで行わないことが特徴ですね。
【一本松】 ファイナンスだけなら、もっと大きい機関がありますし、そこがやればいいことです。我々がやることはマネジメントなのです。基礎技術以外のことは我々が面倒をみるというのが基本的考え方です。
【森本】 材料以外の分野の技術は対象にあるのですか。
【一本松】 我々が今やっているのは、材料、バイオ、医療という分野の技術になります。医療は、製造が承認制なので、一度入ってしまえば、後発の参入がしづらくなるメリットがあります。



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