【森本】 創業は一人でスタートしたのですか。
【一本松】 私が独立する話をしたら、岡田治という大阪ガスの同僚が、一緒に辞めるといってくれて、それで同じ事務所で事業を始めました。岡田のほうは、ルネッサンス・エナジーリサーチという会社を作って、会社の経営はそれぞれが責任を持つ形で二つの会社で始めています。岡田は、化石燃料からの水素製造については世界的権威ですので、水素がらみのプロジェクトを受託して事業をやっています。私のほうは、バイオとか半導体といった付加価値が高くてベンチャーが作りやすい技術に集中しています。エネルギーとか、環境のベンチャーには怪しげなものも非常に多いので、現在はあまりタッチしていません。今は事務所も別々で経営はほぼ完全に独立しています。
【森本】 技術の目利きでベンチャー投資を始めたというケースは、これまでのVCビジョンの取材では珍しい例ですね。
【一本松】 そうですか。
【森本】 ディールや案件を探すルートは、ビジネスを始める段階からできていたのですか。
【一本松】 はい。材料分野ではもともと顔が広かったですし、その分野の学者はよく知っていましたので。そういう意味では、シーズもありますし、ニーズのつかみ方も持っています。もちろん、実際に始めてから学ぶことも多いのですが。
【森本】 具体的にどういう点で新たな認識ができましたか。
【一本松】 一つは、どういう投資家が、どんなプロジェクトに投資したがっているのか、ということは実際に投資家にお会いすることでわかってきたことですね。
【森本】 ところでインキュベーションとは、特別目的会社を作った段階のことをいうのですか。
【一本松】 いいえ。基礎研究を進めている段階のことを指します。
【森本】 ということは、技術の開発者を社員にして、給料を払いながら、その技術の事業化を進めるということですか。
【一本松】 はい、そうです。そして、事業がスタートして特別目的会社になったところで、それまでのものを、営業権譲渡で全部移管するという形です。
【森本】 つまり、応用開発する研究者を社員として雇って、会社を作って、大幅に増資する形で資金を調達する、ということですね。
【一本松】 そうです。
【森本】 経営陣には一本松さんと、その技術開発者がなるのですか。
【一本松】 いえ、オリジナルに開発した人は学者ですから別で、応用開発の責任者になる人と私と二人で共同経営する形にします。応用開発責任者は、技術をもとに商品開発して事業化していくことが仕事です。おおもとの技術開発者である大学の先生から技術を引き継いで商品開発していくわけです。そして、技術責任者のほかに研究員も別に採用しています。
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