【森本】 一本松さんのようなスタイルで投資活動を行っている人はほかにいますか。
【一本松】 いや、知らないですね。同じようなことをしているところはないです。ただ、大阪大学の大学発ベンチャーであるアンジェスMGには少し似ているところがあるかもしれないですね。
【森本】 現在の二つの特別目的会社の事務、総務、会計といったマネジメントは、一カ所に集中させているのですか。
【一本松】 はい。EXITの際には分けないといけませんが、別々にやると効率が悪いので、マネジメントと事務は集合してやっています。プラットフォームにして特別目的会社が委託しているという形です。
【森本】 技術の対象は、大学の技術研究にフォーカスしているのですか。
【一本松】 そうです。技術者に起業家として才能があるのなら、その方がおやりになればいいと思いますが、なかなかそうもいきません。我々としては、この大学の基礎研究から「勝てる技術」に焦点を置いて、技術が優れていればそれに合わせた人を連れてきて、商品化や販売法の研究をするわけです。ただ、この応用分野も結構難しくて、何に応用できるのかを発想するのが、我々の重要な仕事になります。変わった材料だけど何に使えるのかわからない、というものが非常に多いですからね。
【森本】 一本松さんがおっしゃる目利きとは、技術の目利きだけではなくて、マーケットで勝てるということまでを含めて判断することなのですね。
【一本松】 もちろんそうです。我々はビジネスマンですから、マーケットが見えてなければ、技術の応用はできません。
【森本】 マーケットに対応して技術の応用分野を開発するために、ノウハウのようなものはあるのですか。
【一本松】 そうですね、逆にいえば、一つの技術に対して必ず応用分野を見つけなければいけないわけではないですから、ひらめかなければやらなければいいわけです。技術のオリジナリティのレベルの高さがあれば、結構アイデアは浮かんでくるものです。また、社会のニーズが変化してくれば、技術状況も変わってきますから、そこはいろいろだと思います。
【森本】 ニーズの読み方には、コツはありますか。
【一本松】 発想はひらめきなのでしょうが、実証することが大事です。現場に聞くとか、ユーザーの声を聞くとかです。ただ、ユーザーの声を聞くからユーザーのいうとおりにするということではなくて、ユーザーが潜在的に持っている真のニーズを掘り起こして、そこに絵が書ければ、それをやるということですね。やはり、ニーズは創り出すものだと思っています。
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