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VC vision
前編 後編
第32回 大和SMBCキャピタル株式会社 後編 日本型ベンチャーキャピタルを目指して
大和SMBCキャピタルは、株式市場に上場するベンチャーキャピタルとして、
株主、出資者への利益還元を第一義に掲げる。
そして今後は、より高い投資収益をあげるために、ベンチャーキャピタルにとどまらず、
バイアウト投資部門にも注力して総合的なプライベートエクイティ会社を目指すという。
後編では、日本が独自に形成すべきベンチャーキャピタルモデルのあり方を、
執行役員 投資第一部長の横山英世氏に語っていただいた。

interviewer:森本紀行(ベンチャー座アドバイザー、HCアセットマネジメント代表取締役社長)
投資先事例

リスクとリターンの判定に一番注意を払う

【森本】 投資部での案件の発掘はどのようにされているのですか。
【横山】 まず、大和証券と三井住友銀行からの紹介案件の検討があります。これまで大和証券の窓口は投資企画部が担当していましたが、10月からは投資開発部に移管しています。三井住友銀行の窓口は投資第2本部が担当しております。あとは、投資部の個人個人のネットワークから案件を発掘する自主開拓が重要なルートになります。投資先の紹介や他のベンチャーキャピタルからの紹介を含めて、それぞれのネットワークから情報を得ていきます。
【森本】 案件の審査はどのような進め方をしていますか。
【横山】 担当者が持ち込んだ案件に対して、所属長の判断を経てから部内で検討します。そして、それが技術系の案件であれば、テクニカルアドバイザーにかけた審査をします。その後、先方の役員との面談による審査を行います。そして最終的に、社長と役員で構成する投資委員会で決定という流れになっています。
【森本】 投資委員会はどれくらいのペースで開催していますか。
【横山】 毎週水曜日に開催しています。案件が多いときには2日にわたって投資委員会を行うこともありますが、平均するとだいたい毎週3〜5社の審査をしています。
【森本】 現在の投資状況はどのようなものですか。
【横山】 昨年投資した企業数は100社を超えています。
【森本】 審査で投資を見送った企業のその後のフォローはどうされていますか。
【横山】 一回投資を見送った企業でも、問題点が改善されていれば投資対象になるわけですから、投資を却下したあとでも継続して、その企業のウォッチングは続けています。担当者は、ファイナンスを検討するずっと前からその企業を見てきているわけですから、その関係性は、そのまま続けていくことになります。
【森本】 審査で、判断のポイントにしているところは何ですか。
【横山】 やはり、リスクとリターンの判定に一番注意を払います。当社は株式上場していますので、まず株主の利益に応えなければいけませんし、それにファンドへの出資者の利益にも応えなければなりませんから。収益を上げることが大前提です。もちろん、儲かればどんな企業でもいいわけではなくて、社会貢献できる企業、技術であることは重要です。

その技術が世の中に必要とされているものかどうか

【森本】 投資案件で最も重視しているポイントはどこですか。
【横山】 投資して出口まで持っていけるかどうかが重要になりますね。ものすごい技術を持っているベンチャーがあったとしても、その技術が世の中に必要とされているものかどうかということがポイントになります。他の技術でも7割方は代用できて、もっと低コストでできるようなら、その技術の必要性は少なくなります。そして、いくら技術がよくても、経営者の質が悪かったら、これもどうしようもありません。そういうことを総合的に判断して投資していくということです。やはり、肝になるのは、「人」だと思います。経営者や経営体を構成する人たちが、本当に能力がある人たちが揃っていないと、成功するのは難しいと思います。たとえば、困難が訪れたときに、それに対処できないようでは困ったことになりますからね。
【森本】 人を見るのは、難しいと思いますが。
【横山】 非常に難しいですね。ですから、長い過程を経て審査しながら、いろいろ見ていくことになるわけですね。また、そうせざるを得ません。
【森本】 イグジットについてはどういう考え方をされていますか。
【横山】 日本のベンチャー投資では、IPOによるイグジットが8〜9割を占めているのが現状です。必然的に投資する過程で、IPOできるかどうかに重きを置くことになります。そのため、選択肢が非常に狭められているのです。対して、アメリカではM&Aが6〜7割を占めます。IPOよりも多いのでいろいろな投資の絵が描けます。この違いが大きいのですね。ですから、日本ではIPOができて、そこからさらに成長するエクイティストーリーを描けるかどうかが重要になります。M&Aなら単純に売却すればいいわけですから、投資段階での選択肢がぜんぜん違うのです。日本の製薬会社でも、海外のバイオベンチャーは買うのに、日本のバイオベンチャーは買わないですね。日本にもバイオベンチャーはたくさんあるのに、どこも買ってくれません。日本にはM&Aの市場がほとんどないために、こうしたことが起きてしまっているのです。
【森本】 IPOは国内市場だけの展開ですか。
【横山】 海外市場での上場は、口でいうのは簡単ですが、実際は難しいですね。どうしても、国内の投資先は、やはり国内の株式市場で上場を、ということになります。
【森本】 イグジットしたあとの投資先の企業成長支援は、親会社に引き継ぐ形になっているのですか。
【横山】 そうです。ファンドには出資者がいますから、まず出資者のことを考えなければなりません。イグジットを迎えたら、速やかに利益を確保することが、我々としての大命題です。その後の投資先への支援に関しては、親会社に幹事証券会社を引き継いでもらったり、銀行融資を行ったりする形になります。



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