【森本】 アメリカではファンド運営者に継承者がいませんから、パートナーが高齢化したらそこで終わりになると思います。
【横山】 当社でも新入社員で入社してくる者の中には、そういうアメリカのキャピタリストにあこがれている者もけっこういますよ。
【森本】 私はベンチャーキャピタルの日本的なスタイルを考えていかないといけないと思うのです。
【横山】 私もそう思います。ただ、私がやりたいと思うのは、2006年にグーグルがYouTubeを株式交換で2000億円以上で買収しましたよね。それも、YouTubeができてから2年も経っていないときにです。そういう投資を日本でもできないかと思っているのです。日本発のベンチャーで世界に羽ばたいていけるベンチャー企業に投資したいという思いがあります。日本のベンチャーにも社会に貢献してほしいと強く思います。そういうベンチャーへの投資に関わりたいと思いますね。
【森本】 アメリカを見ていて思うことは、経営モデルがいいから成功しているのではなくて、後ろに強力なファイナンスのスキームがあるから成功しているのではないか、ということです。日本はみんな細かいファイナンスで投資しているので、みんなうまくいかないのですね。特定のところに巨額のファイナンスをつければ、うまくいくと思うのです。日本には経営者がいないとか、投資機会がないといわれているのは、明らかに間違いだろうと思います。そうではなくて、日本には、集中的にファイナンスをつけるスキームがないのだと思うのです。
【横山】 そうですね。
【森本】 でも、上場企業として株主のことを考えたら、そういう集中させる投資のあり方は受け入れられないかもしれないですね。
【横山】 確かに1回の投資で出せる金額は、限られていますからね。ひとつの企業に1回で50億円、100億円と出せればいいのですが、日本では、やはりそうはいかないですね。
【森本】 1,000万円くらいの投資で時価総額が1兆円の企業ができるわけがないですからね。何百億円も投入するから1兆円の企業ができるのに決まっていますからね。だから、どうしたら、そういう巨額の投資とコーポレートガバナンスが両立するのかですよね。
【横山】 我々は現在、580億円のファンドを運用していますが、これは、制度上1社に対して1割まで投資ができることになっているので、58億円の投資ができるファンドなのです。先日あるベンチャー企業の総額111億円のファイナンスの内、リードベンチャーキャピタルとして弊社だけで38億円の投資を決めましたが、そういう投資ができるのが、日本のベンチャーキャピタルでは、弊社の他1、2社といったところだろうと思います。
【森本】 そういう投資が成功すると、日本でも案件を絞って集中投資したほうがいいという世論ができてくると思いますね。そうすれば、アメリカの機関投資家の日本市場への評価もずいぶん変わってくると思います。
【横山】 我々は、アメリカのようにはできないわけですからね。ですから、バランス型の投資も行いながら、集中した投資も行うといった投資活動を実践していけばいいのではないかと思っています。
|