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Vol.023 市民バンク代表 片岡勝第3話 透明性
コラム(3) パーソナル・データ(3)
生活に密着した投資
 成熟経済になれば、間接金融から直接金融へという流れが出てくるだろうなという予測は、ずっと以前から持っていました。米国でも9割、英国でも7割が直接金融です。つまりファンドの方が多いのです。日本のように、株への投資が1割にも満たなくて、残りの9割が銀行に預金している状況というのは、少なくとも成熟経済とは呼べません。
 銀行にお金を置いているというのは、預金者が何もしないと言うことですから。成長期でしたら、それでも日本経済全体に資金が不足していましたから、そこそこの金利が付きました。もう、金が日本では余っています。その金が大企業の株にも流れるでしょうが、それだけではない、地域で必要としている社会起業に流れ出します。だから緩やかにではあっても、いずれは直接金融という方向にシフトしていくなかで、これからの投資というものは、単に証券会社を通して市場から株を買うというものではなくなります。
 少し説明しますと、それぞれが暮らす地域に必要なこと、自分の生活に密着した、自分自身が必要だと思う事業に投資するのが、本来的なファンドのありようだと思うのです。たとえば、自分はこのグループに介護してほしいというところがあれば、そこに必要なお金を出しておくことで、後々、面倒を見てもらえるわけです。そういうファンドがあれば、双方にとって有益で意味あることだろうという発想で7つの地域ファンドを数年前に始めたわけです。最近、ご当地ファンドというのが流行り始めましたが、発想としては同じです。

責任としてのリスクテイク
 ファンドは、基本的に半分は僕自身も資金を出して、運用者の責任として一緒にリスクを負う形にしています。資金を出させてくださいという問い合わせはあるのですが、ほとんどお断りしています。説明責任とか、利回り、リターンということにうるさい人とは、なるべく付き合わないようにしています。そういう単語は、僕の中にはありません。乱暴な言い方ですが、社会に感謝されればいいじゃないか、という気持ちでやっていますから。市民バンクと併存させながら、雇用創出ファンドや留学生ファンドなど、地域を決めて目的別のファンドを立ち上げています。それぞれ、その問題解決に困って解決を欲するエネルギーがある地域に作るのです。
 ビジネスを構想している人には、最初に投資と融資のどちらがいいのかをたずねます。女性たちの基本はお金を借りたくない、というものです。いつまでもうるさいことをいう変なおじさんに、株主としていて欲しくないのですね。どうしようもない時は借りるけど、できるだけ早く返して関係は精算してしまいたいのですね。でも、アドバイスはしてほしいから、アドバイザーとして残ってほしいのです。そういうドライな人が多いです。その場合は融資と、そう決めています。今まで融資と投資は、それぞれ6億円から7億円くらいですが、どちらも無担保でも焦げ付きはありません。みんな返してきます。都銀が貸さない時に、一番に融資したりしていますから、恩義を感じてくれているのでしょう。ファンドも活きた金として活用されています。
 最近では市民バンクが貸していることがわかると、他の銀行が貸してくれるらしいです。「市民バンクは貸し倒れがないから、あそこが融資しているなら大丈夫だ」ということです。それなら、うちは少額にして、リスクは都銀の方でとってもらえばいい、といっています。

(1月30日更新 第4話「知恵の力」へつづく) 




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