島根の温泉津に吉田屋という旅館があって、そこが後継者を探しているというのです。みんな高齢で、お膳を運ぶ人も、お客さんが大丈夫ですか、と心配するくらい。それで僕の教え子に話して若女将になってもらいました。今は売り上げが2.4倍で全国紙にも何度か載るほどになりました。そうしたら、1年間に100人以上もインターンが訪ねて来るようになりました。ある女性と面接したとき、以前の職場でよほど嫌な目にあったのでしょうね。すごく暗い顔をしてやってきました。「わかった。君はリハビリ採用」といったら、途端に表情が緩んで、「リハビリでいいんですか」と嬉しそうに笑うのです。最近は、いろいろな鎧を着て、社会のルールに合わせて無理する若い人が多いですね。みんなもっと自然に生きればいいのですよ。
だから今、僕は農林漁業の再生をテーマにしているのです。島根県や山口県でお茶園やブドウ畑を去年からやっています。今年は林業と決めて、今、所有したり管理運営している山林が百町歩以上ある。森を生かし元気にするには人が入るようにしないといけません。そこで山口県と島根県に8カ所ある森で毎週土日にイベントをやりました。でも、それは儲けるためにやるわけではなくて、みんなで山を再生し、土を踏みしめて、間伐して、太陽が差し込む体験をすると、本当に清々しいのです。そこに風が通り抜けていき、「あーっ」とため息をつきながら汗を拭った時の快感というのは、本当に輝いています。
一度、そうした体験をするとわかるのですが、それには値段がつけられません。細胞が騒ぐのですよ。ざわざわっと。そういうことで自分が活性化し、何かエネルギーが溢れ出てきます。そして、エネルギーのある人同士がぶつかると、増幅してアイデアも生まれます。そういうエネルギーのある場所にいると、生きている実感が湧いてくるのです。
|