国民金融公庫は、政府系の中小企業系金融機関です。私は調査部在籍中に小規模企業の新規開業調査を行いました。4、5名のチームで2年間にわたって1,000社以上を訪問しました。なぜ調査を行ったかというと、1963年くらいから中小企業の新規開業が増えてきたのですが、増えている理由についてプラスの理由が見つからなかったからです。一般にいわれていたことは、中高年層が職を失い、仕方なく自分で中小規模の企業を始めているという説明でした。
しかし、経済が高度成長している現状があるのに、その説明は合わないわけです。実質経済成長率が年率10%でしたから、今の中国のような状況です。失業率も実際はかなり低かったのに、失業した中高年が中小企業を始めているというのも疑問でした。
実際に調べてみると、中小企業を興しているのは主に20代で、とくに25歳から32歳に集中していました。その年代が失業しているわけはない。一般に流布している通説がまったく間違っていたのです。首都圏と近畿圏でその傾向が顕著で、中小企業の数が増えていました。
しかも、その中には従来の中小企業と趣の異なる企業が出てきていました。それがいわゆるハイテク分野の企業でした。それまでは経営者の学歴も、多くが中等教育、旧制なら中学、新制ならば高卒であったのに対し、新しい中小経営者の多くは大卒、なかには博士号を取得した人もいました。また、大手企業勤務経験者というケースも多くありました。
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