そこで、信用保証機関が必要だろうということで、当時の通産省に問題提起をしたのです。その時の課長が村井仁という人で、現在の長野県知事です。村井さんはすぐに他に移られたので、代わりに着任された熊野英昭さん(後に東京中小企業投資育成株式会社代表取締役社長)の代で、1975年にVEC(Venture Enterprise Center/財団法人ベンチャーエンタープライズセンター)が設立されました。
米国の場合、ナスダックという新興株式市場ができて、株式公開が容易になったことでベンチャーキャピタルの投資活動が活発化しました。日本では、1983年に株式の公開基準が緩和されましたが,それまでは株式公開が非常に難しかった。1972年から73年に、日本でも相次いでベンチャーキャピタルが誕生しましたが,当時の試算では株式公開までに平均26年かかるといわれていました。それではベンチャーキャピタルは成り立ちません。そこで、直接金融が無理というのであれば、銀行融資でやろうということになりました。そして銀行のリスクが大きいのなら、信用保証すればいいということでVECを提案したのです。
VECの保証で銀行がお金を出して、その保証料については企業側に出してもらうことにしました。成功すれば、VECに成功報酬として、その企業の年商または利益の数%を寄付してもらうという仕組みです。1983年に株式公開基準が緩和されたときもすぐに投資は進みませんでしたが、次第に他のベンチャーキャピタルが出てくるようになりました。ですからベンチャーキャピタルが根づいた時点で、VECの役割は終わったといえます。
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