起業家・ベンチャーキャピタル・投資家を繋ぐコミュニティ・マガジン

Front Interview
第1話 第2話
第3話 第4話
Vol.030 シブサワ・アンド・カンパニー株式会社代表取締役 渋澤健第2話 選択
コラム(2) パーソナル・データ(2)
異分子と世代感覚
 今までを振り返ると、その時々の時代の流れの中で、自分が置かれている立場とマッチングする方向に進む形で人生を歩んできたように思います。1980年代の頃は、日本人でMBAを持っていることがアドバンテージになった時代だったので金融の世界に足を踏み入れたわけですが、それが今の時代になると、MBAを持っていること自体が突出した価値ではなくなっています。ならば今はどういう時代かというと、一つには新しいことを始めようとする人たちを求めている時代ではないかと思っています。
 1980年代は、私のような異分子に対して、その存在は認めたとしても、ある意味、お客さん扱いでした。しかし最近は、昔と比べて異分子に対する許容度が高まってきたような気がします。2002年に経済同友会に誘われた時も、正直、私のようなものが参加するところではないような気がしましたが、若手の意見が必要だということで声がかかりました。最初の会合に出席した時はやはり、年齢も経歴もすごい人たちばかりでしたから、“ここは自分のいる場所ではないな”と感じたものです。しかし慣れというのは恐ろしいもので、その場に馴染んでくると平気になります。
 なぜ私が経済同友会のような集まりに呼ばれたかというと、たぶん時代感覚というか、世代感覚の違いがあったからかもしれません。70代の人たちというのは、子供の頃に戦争を体験していて、世の中ががらりと変わるという原体験を持っています。その次の団塊の世代の人たちというのは数も多く、高度成長期を迎えて、その波の勢いに乗って逃げ切ればいい、そういう感覚があると思うのです。

上を向いて歩こう
 経済同友会で年金問題を議論していた時に、その講師の方が、いろいろな問題を指摘された後、最後に「でも、皆さんは問題ありません」とおっしゃった。「1960年以前に生まれた方は、今の制度で逃げ切れます」と。私は1961年生まれで、現在47歳ですが、“そうか、目の前で逃げ切られちゃうのか”と。そういう意味でも、40代とその下の30代には、50代、60代の人たちと比べるとこのまま行くとまずい、という意識が強くあって、時代感覚の大きな相違としてあると思います。
 私たちは団塊のしっぽの世代ですから、上を見たら、青空が見えないのです。組織の中にいたら、たくさん人がいて、自分があそこまで到達するのに何年かかるのか、と。ですから、専門性を築いた40代の転職が多いのは、うなずけます。脂が乗ってきた時に、今の組織にいて、これまで磨き上げた専門性が活かせるのか、そこに疑問を感じて職を転ずるというパターンが多いのです。
 2000年くらいの頃、それまで私は中国を脅威だと思ってはいませんでした。でも、ある中国人の方に、「今、中国の13億人が、夜寝る時に何を思って寝床に入るかわかりますか?」と聞かれました。「それは、今日より明日が良くなると信じて寝るんです」と。その話を聞いた時に、中国はこれから脅威になると心底思いました。なぜなら、日本人の多くは、明日が今日と同じであればラッキーと思っていて、ほとんどの人は悪くなると思っているわけです。その目線、ベクトルの置き方の違いは、規模の違いよりはるかに大きい。昔は日本も、坂本九さんが「上を向いて歩こう」と歌ったように、明日は今日よりもよくなると思って、上を向いて歩いていたのです。その目線の違い。このままでは、日本はまずいなと感じました。

(8月20日更新 第3話「家宝」へつづく)



HC Asset Management Co.,Ltd